近くのスーパーに出かけた。

 

 大して買い物をすることはないが、広い店内でたくさんの商品を見て回るのが好きなのだ。

 

 

 野菜のコーナーにいると、隣でブツブツ言いながら買い物をしている男がいた。

 

「ネギ、高くなったなあ」とか、「ズッキーニは1本でいいか」とか、妙に気になる独り言である。

 

 思わず、男の顔を見た。

 

 長身でソフトハットを被り、買い物袋を手に下げたその姿には見覚えがあった。

 

「あれ、もしかしたらEさんのお店を手伝っていた、Kくんじゃない?」

 

 自分は男に声をかけた。

 

 一瞬、男は戸惑ったが、ほら、遅い時間によく遊びに行っていた、と話すと、

 

「ああ〜、思い出しました。またこんなところで、エヘヘ」

 と、男はくしゃくしゃの笑顔になった。

 

 このKくんは、当時は精悍な若者であったが、いまでは人の良さそうな中年男だった。

 

 聞くところ、お店をやっているらしく、狭いながらも一国一城の主人となっているそうだ。

 

 今度また伺うとKくんと約束をして、その場を離れた。

 

 しかし、後で彼の店の名前も場所も聞いていなかったことに気づいた。

 

 またこのスーパーで出会うかもしれない。

 

 まあいいか、ということにしておこう。