ずっとご無沙汰していたお店があって、久しぶりにそこに伺った。
町の小さな定食屋さんだ。
初めて入ったときには、当時30代後半くらいの恰幅のいいマスターと、小柄で喋りの達者なおかみさんがいた。
今は人の良さそうな、痩せた老夫婦。
少し話をしながら、好きだった唐揚げ定食を頼んだ。
「あんたさぁ、いつもこればっかりだったよね、昔から」
おかみさんが、苦笑いしながら。
「ここの唐揚げを食べたら、他の唐揚げは食べられないですよ」
自分がそう言うと、マスターは、
「なに言ってやんでぇ、シャレにもなんねえよ、ったく」
と言い放つ。
江戸っ子弁のようだが、マスターは東北出身である。
自分は、「いや、この味は他では出せない味ですよ。今まで食べた唐揚げの中でも、珍味中の珍味」
と、思わず口にした。
「なんだよ、珍味ってよ」
マスターが不機嫌そうに。
「酒に合うってことですよ」
自分はすかさず、フォローした。
おかみさんは、思わず失笑。
マスター、「なんでぇ、そっちの方かい」と、苦笑いした。
なんとなく3人が笑い合えたので、ひとまず安心ということになろう。