閉店間際のスーパーに行く。

 

 セルフレジに慣れない高齢者たちが、これもまた慣れない手つきで、一列に横並びしながら買った商品をレジ袋や持参のバッグに詰めている光景が外から見える。

 

 彼らがモタモタしているのは仕方がない。実際にセルフレジの扱いは面倒だし、レジ袋に入れるのにも、目が悪かったり手が思うように動かない方も多々いるだろうし、だとしたら本当に不便だろう。

 

 そんなことを考えながら、店員も客も少なくなってきた寂しい店内に入る。

 

 自分は鮮魚コーナーで、タイムサービスで安くなった刺身を買うのが好きである。

 この日は、あん肝ポン酢と藁焼きカツオのタタキを買った。今日はこれくらいで十分。

 

 

 帰宅すると鍋に湯を沸かし、その中にチロリを入れ日本酒を注いだ。

 チロリは「酒たんぽ」とも呼ばれ、お燗用の酒器。うちのチロリはかなり昔のもので、注ぎ口と取っ手がいい感じでウェーブしており、保温性に優れた錫製のものだ。

 

 旅先の骨董店で買ったものである。

 30年以上前に手に入れたものなのだが、一体いつの時代に作られたのだろう。使い心地が優しく感じられる。

 

 それにしても、どんな人がこのチロリで酒を温めていたのだろうか。

 旅先が北海道の夕張だったので、もしかしたら、どこかの炭鉱町にあった飲み屋が閉店でもして、そこから流れてきた品だったかもしれない。

 

 年季の入った外見なので、チロリはきっと自分が生まれる前から、たくさんの人の心も温めてきたのだろうと想像した。

 

 そして、燗酒のふつふつと立ち昇る湯気の向こうから、そんな時代の人々の賑わいが聞こえて来た、としておく。