やや湿気を感じる、薄曇りの朝。

 

 散歩がてら買い物に出かけた。

 

 コンビニの前で、自転車に乗ったMさんと出会う。

 

 Mさんは、近所に住むネコ好きな女性で、ノラネコの里親を探したり、その後も里親にネコの餌を届けに行ったりしている親切な人だ。

 

「あら、よく会うわね」

 とMさん。

 

 別によく会うわけではないと思うが、そういう印象があるのだろう。

 

「そちらの方はいかがですか。そういえば、ついにあの空き地にビルが建ちましたね」

 と、自分は言った。

 

 以前、空き地ではネコが数匹暮らしていて、そのネコたちを構いに行っていた時に、Mさんと知り合ったのであった。

 

「随分、時間がかかったわね。昔ならすぐ建っていたのにね。あの空き地は元は銭湯でさ、広くていいところだったのよ」

 

 コンビニの前で立ち話を始めた自分たちのことを、コンビニ前でしゃがみ込んでカップ焼きそばを食べていたスケボー少年たちが、不思議そうに見上げていた。

 

 人出入りの多いコンビニだったので、「じゃあ、また」ということで別れる。

 

 

 ネコが好きで、お酒も好きなMさんが、その空き地の隣にあった一杯飲み屋に招いてくれたことがあった。

 

 そこで聞かされた、Mさんが目醒めたら天井を逆さになって歩いていたネコの話が面白かったことを思い出す。

 Mさんはその瞬間、ネコと目が合ってしまい、ネコの方が驚いた顔をして、すうっと姿を消してしまったという。

 

 その状況がなんだかおかしくて、その話を聞いたときは大笑いしたものだが、今思い返しても笑えてしまう。

 

 Mさんがネコに親切にしてやっているので、ネコの魂が見守ってくれていたのだろうか。