以前見た、夢の話である。

 

 

 自分は黒味がかった細かい砂の上を、分厚い靴を履いて歩いている。

 鉄分やケイ素の含まれた砂は、乾燥しサラサラとしており、何度も足を滑らせる。

 

 黒い岩山を登ってゆくと、平らになった山頂にちゃぶ台があり、そこに浴衣姿の老人が座っていた。

 

 老人はちゃぶ台で酒を飲みながら、首を伸ばして遠くを眺めている。

 

 その視線の向こうには、小さな青い惑星が見えていた。

 

 老人がこちらに向かって話しかける。

 

「あの地平線の向こうに見える惑星ですが、どうです、随分と寂しそうじゃありませんか」

 

 太い黒縁メガネをかけたその老人は、惑星を指差しながらそう言った。

 

「あそこにかつて人類が住んでいたなんて、信じられないですね」

 

 自分は老人の横顔を見つめながら、そんなことを口にした。

 

「すべてが刹那です」

 

 老人は、はげ頭を撫でながらそう言った。

 

 そして老人は、脇に置いてある一升瓶から、湯呑み茶碗に酒を注いでくれた。

 

 老人の側には、1匹の黒猫がいた。

 

 その黒猫は、じっと青い惑星のほうを見つめている。

 

 自分は老人の横に座り、一緒にその惑星をオペラグラスで眺めた。

 

 やがて老人は、オペラグラスを無造作にちゃぶ台に置いてから、こんなことを言ってきた。

 

「あの惑星ですが、ちょっと聖母が抱いた天使の卵のようにも見えますな」

 

 

 ※過去記事に、加筆修正したものです。