毎日暑いので、やる気が削がれる。

 

 ふてくされて寝そべっていると、どこからともなく太鼓を叩くような音が聞こえてくる。

 

 近くのような気もするが、どこかで夏祭りの練習でもしているのだろうか。

 

 それにしても、そんな施設がこの近くにあっただろうか、と思う。

 

 涼しくなってから外に出てみたが、もう太鼓の音は聞こえてこなかった。

 

 

 考えてみれば、あれは太鼓の音のように聞こえていたが、実は遠くで工事でもしていて、その音がビルの谷間に反響し、たまたま太鼓の音のように響いてきていただけなのかもしれない。

 

 そう考えると、どこか寂しいような気がした。

 

 

 

 昔話であるが、深夜に山中などから笛や太鼓の音が聞こえることがあり、それを昔の人は「天狗の太鼓」とか「狸囃子」などと呼んだが、その正体は今も不明であるが、昔からそんな奇妙な音の現象はあったようだ。

 

 そう思うと、自分が聞いた太鼓の音の正体は、無理に探る必要はないかとも思えてきた。