最近見た夢の話である。

 

 

 街道沿いの、宿場町のようなところを歩いている。

 

 長い坂道があり、自分はその坂を登ってゆく。

 

 すると、道沿いの家の格子戸が開いて、K子さんが出てきた。

 

 K子さんは、自分が10代の頃に知り合った芸大生で、海外に留学したいと言っていたが、親に反対されて郷里に戻った。

 

 その後のことははっきりと知らないが、すでに故人となっていることを伝え聞いていた。

 

 

「お久しぶりですね」

 

 と自分がそう言うと、K子さんは、

 

「この家がわたしの実家なんですよ。今でも実家で親の手伝いをしているんです」

 

 と話して、寂しげに微笑んだ。

 

 そしてK子さんは、坂の方に向かって歩き出した。

 

 彼女は桃色のベレー帽がトレードマークで、いつもそのおしゃれなベレー帽をかぶり、自分達の溜まり場の喫茶店で月1回開かれる、馬鹿話をする集まりに参加していた。

 

 その当時のことを思い出し、

 

「あれ、今日はベレー帽はどうしました」

 

 と、自分はK子さんに尋ねた。

 

 すると、K子さんは坂道の途中に停めてあった原付の座席下から、白いベレー帽を取り出してそれをかぶった。

 

 ふたりが黙って坂道を歩いていると、途中で雨がポツポツと降り始めた。

 

 雨は淡い桃色をしていた。

 

 その雨に濡れた彼女の白いベレー帽は、桃色に染まった。

 

 K子さんは自分の方を振り返り、はにかんだ笑みを浮かべた。