最近見た夢の話である。

 

 

 自分は、ミュージシャンのT子と雑談している。

 

 その中で、T子が今度のイベントで使う手品の大道具を、舞台美術の会社からレンタルしたと自慢していた。

 

 自分は、その大道具が実際に動いているところをスマホで見せてもらったが、それは大きな柱時計であり、下にある振り子部分の中に入ると、そこから別次元に移動できるというものであった。

 

 しかし動画を拡大してみると、そのガラスが嵌められた振り子部分に、何人もの人間が閉じ込められて、恐怖と苦痛に歪んだ顔をしているのが見えた。

 

 その大道具は、超自然的な悪魔めいたなにものかのように思えた。

 

 自分はT子に、

 

「これは普通じゃないから、使うのをやめたほうがいいよ」

 

 と指摘するとT子は、もう業者とは契約済みで、大道具は明日届くという。

 

 だが、その拡大部分を見せると、T子は恐怖を覚えはじめ、慌ててキャンセルしたいと騒ぎ出した。

 

 ところが、その会社のホームページは、キャンセルできないようになっているらしく、このまま契約を続行するしかなさそうであった。

 

 焦ったT子は、自分になんとかしてほしいと頼んだ。

 

 自分は、その会社の住所と担当者の名前を聞いて、会社の所在地に向かった。

 

 

 その会社は、すでに廃業したデパートの中にあった。

 

 真っ暗なデパートの中に入ると、放置された展示ケースや座り心地のよさそうな椅子が埃をかぶって、そこにあった。

 

 自分は、担当者の名前を叫んだ。

 

「ヘザー・アイリッシュ! いますか!?」

 

 すると、薄暗いフロントのあたりから、奇怪な軋み音を立てて、一体のマネキンが歩いてきた。

 

 マネキンは丸坊主でポーズを付け、うすら笑みを浮かべている、部屋の一角に廃棄されたものであった。

 

 そのマネキンは、まるで意思があるかのように、こちらに迫ってきた。

 

 自分はマネキンに向かえる道具はないかと探し回り、ようやく1本のバットを見つけた。

 

 そして、そのバットでマネキンの頭部を破壊した。

 

 マネキンは床に朽ち果てたが、まだ腕だけが不規則に動いている。

 

 自分は、そのマネキンを見下ろしながら、

 

「これは、下手なAIなんかと契約するよりも、よほどタチの悪いものだったな」

 

 と、言い捨てた。