最近見た夢の話である。

 

 

 自分は7歳くらいの子どもになって、パーマをあてた女の人に手をひかれながら、夜店を見て廻っている。

 

 裸電球とアセチレンランプの灯りが、薄暗い夜店に並ぶ品々を照らし出す。

 駄菓子、セルロイド製のお面、くじ引き、射的の景品、ラムネ、水ヨーヨー、わたあめ、杏あめ。

 

 自分は、その女の人に焼きそばを買ってもらい、テント脇の折りたたみ椅子に腰掛けて、美味しそうに食べた。

 

「次はどこに行きたい?」

 

 と、その女の人が自分に声をかける。

 

 その人は、昔の映画女優のように美しい。

 

 自分は、「次はマンガを読みたい」と言って、地面に敷かれたビニールシートに、廃棄された漫画雑誌や雑本を並べて売っている古本屋に向かった。

 

「口に青のりが付いてるわよ。取ったげる」

 

 と言って女の人は歩きながら、赤いマニキュアをした指で、自分の唇をそっと拭った。

 

 自分は古本屋のシートの前にしゃがんで、他の子どもたちと一緒に漫画雑誌を手に取って読み始めた。

 

 しゃがみ込みながら、女の人の方を振り向くと、屋台の陰で誰かと立ち話をしているところが見えた。

 

 しばらく見ていると、女の人は見知らぬ男から茶封筒を手渡されていた。

 

 戻ってきた女の人は、自分が読んでいた漫画雑誌を手に取って、古本屋の親父に小銭を渡した。

 

「そんなに面白いの? どんなお話が載っているの?」

 

 と女の人が、自分に聞いてきた。

 

 漫画雑誌を小脇に抱えながら、自分はロボットが大活躍する漫画のストーリーを熱心に女の人に話して聞かせた。

 

「へえ〜、面白そうね」

 

 と言いながら、女の人はゆっくりと満天の星空を見上げた。

 

 自分は、女の人が受け取った茶封筒には何が入っているのだろう、と思った。

 

 茶封筒は薄っぺらなので、中身がすけて見えていた。

 

 その中には、白いシャツを着てカーディガンの袖を肩に巻いた女の人の写真が入っていた。

 

 その時、女の人は自分を突き放すように、

 

「じゃあ、あんたとはここまでね」

 

 いきなり、そう口にした。

 

 自分は驚いて、

 

「どうして?」

 

 と叫んだが、女の人は自分から足早に離れて行った。

 

 フラッシュバックのように、存在しない記憶が蘇ってくる。

 

 その女の人は、自分の母親であった。

 

 そして、その写真の女の人は、母親の恋人だった。

 

 自分は、なにか大きな取り返しのつかない事が起きているということに気が付いた。