夢の話になる。

 

 

 自分は自転車を押しながら、長い坂道を登っている。

 

 その坂道は道幅が狭く、薄暗い。

 

 少し先には木製の電柱があって、ぼうっと裸電球が点っている。

 

 電柱を目指そうと思い、坂道を登る。

 

 電柱までたどり着くと、今度はその向こうに、さらに同じような木製の電柱があり、薄暗い裸電球が点っている。

 

 自分は、次の灯りを目指して、また自転車を押しながら坂道を登ってゆく。

 

 すると、道の脇に小柄な老人が椅子に座って、ヴァイオリンで悲しげなメロディを奏でていた。

 

 東欧あたりにでもありそうな、ノスタルジックで切ないメロディである。

 

 そこからしばらく行くと、細い脇道があった。

 

 脇道に入ると、道には何本もの切り株があり、それが化石化している。

 

 さらに先に進むと、いきなり墓場に出る。

 

 広いとも狭いともわからない、古いお寺のようだ。

 

 不気味に思い、自転車に乗ってそこから脱出しようとするが、ふと足元を見ると、足場が畳1畳程度のスペースしかない山頂に変わっていた。

 

 その山頂から下界を見下ろすと、ずっと下には街並みがあり、車や人が小さく見えている。

 

 自分は、どうやってこの窮地から脱出すればいいのか、途方に暮れる。

 

 

 この坂道や細い脇道、墓場は夢の中によく現れる場所で、繰り返し登場している。

 

 何かに気を取られていると、いきなりそこに迷い込むのである。

 

 それはどこかにありそうだが、現実にはない場所のようである。

 

 潜在意識の根深い部分に残る、なにがしかのものなのだろうか。