少し前に見た夢である。

 

 

 自分は、真っ暗な夜道を歩いていた。

 

 そこで急に、この近くで「くだん」が生まれたという話を思い出す。

 

 くだんとは人面牛身のバケモノで、牛から生まれると人間の言葉で予言をし、数日後に死ぬといわれている。

 

 夜道を進むと、向こうから白い鹿のような動物が出現する。

 

 よく見ると、それは鹿のようであるが、首の先には人間の少女の顔が付いていた。

 長い耳は垂れ、頭には短いツノが生えている。

 

 自分は、これがくだんなのだろうか、と思う。

 

 その奇獣は足元がふらついて、今にも倒れそうな感じである。

 

 もしかしたら、このまま死んでしまうのかもしれない、と思ってくだんに話しかけてみた。

 

「予言をしてくれないか」、と。

 

 するとくだんは、頭をもたげて何か言いたげな表情を見せた。

 

 しかし、口を開くことはなく、前足を使って地面に文字を書き始めた。

 

 それは縦書きで「のし」と読めた。

 

 なんのことだろう、と不思議に思う。

 

 丸顔の少女の顔をしたくだんは、くねくねと首を左右に振った。

 

 

 目が覚めてから、くだんが書いた「のし」という言葉を考えてみた。

 

 もしかしたら、それは「のし」ではなく「のー」だったかもしれない。

 

 こちらが予言をしてくれ、と言ったのに対し「ノー」と答えたわけだ。

 

 すでに予言をしてしまった後だったのだろうか。

 

 それとも、予言そのものをしたくなかったのか。

 

 予言をしないくだんは、しかしながらどこか愛嬌があって可愛らしかった。