夜は、とあるパーティに出席。

 

 パーティの最中は、慣れないコートを着ていたので、窮屈で仕方なかった。

 

 自分の前で立ち止まり、にこやかに挨拶して過ぎ去ってゆく人たち。

 

 華やかな喧騒の中に立っている自分が、まるでまだ夢の中にいるようである。

 

 パーティが終わると、そのままタクシーで最寄り駅まで。

 

 たまに立ち寄る、商店街の中華料理店に入った。

 

 野菜ラーメンを注文。中華料理店らしい、よく火の通った具材を味わう。

 

 お店の外に出ると、まんまるいお月様がのぼっていた。

 

 そういえば、お月様を擬人化した絵本があった。

 

 あれが顔に見える人がいるわけだ。

 

 そんなお話の中で、お月様は笑っているのだろうか。

 

 それとも、怒っているのだろうか。

 

 悲しんでいるのだろうか。

 

 いや、きっとお月様は眠っているのだろう、と思う。

 

 ずっと以前から長い長い眠りに就いていて、覚めない夢を見ているのだ。

 

 なら、どんな夢を見ているのだろう。

 

 もしかすると、地上にいる我々が、お月様の見ている夢の中の登場人物なのかも知れない。

 

 そうなら、お月様もまた儚い夢を見ているものだ、と思う。

 

 周囲に人がいなかったので、寂れた商店街の路上にて、遥か彼方のお月様に手を振った。

 

 

・Leo Reisman & His Orchestra - "You Do Something To Me" & "You've Got That Thing"