夜、散歩に出かけた。

 

 暖かかったここ数日とはうって変わり、今日は冬らしい寒さとなった。

 

 夜空を見上げると、月齢6・2の三日月の袖に宵の明星が輝いて、それはまるで三日月から転げ落ちた宝石のようである。

 

 さらに、三日月がうっすら閉じた瞼のようにも見え、金星はそんな瞳からこぼれ落ちた涙の雫にも思えて来た。

 

 夜空も涙を流すのだろうか。

 

 そんな夜空の涙は、眩しいばかりに輝いていた。

 

 ほんのささやかな、月と金星の天体シアター。

 

 そのしんみりした雰囲気を壊すように、お茶目なコメットがそこを走り抜けた。

 

 

・Charlie Chaplin ーSmile "From  Modern Times”1936