寝過ごしたため、午後から外出しての昼食。
時間は1時40分くらいだが、あの中華飯店はやっているだろうか。
お店の扉を開けると、奥のテーブルでマスターがラーメンをすすっていた。
「あっ、まだ大丈夫ですか」
と聞くと、いいよ、とのこと。
麻婆豆腐定食を頼むと、マスターは食べかけのラーメン鉢を持って厨房入って行った。
「マスター、こっちの注文は後回しにしていいから、先にラーメンを食べてください」
と自分が言うと、マスターは、
「食べるのに、30分はかかるよ」
と答える。
「そんなかからないでしょう」
と言って、苦笑。
だがさすがプロ、マスターはラーメン鉢を横に置いて、鉄鍋を振るい始めた。
「今、このタイミングで次のお客さんがきたら、またラーメン食べるのが遅くなってしまうよ」
と、こちらは心配していたが、その予感は的中。
なぜか1000円札を片手に握りしめた男性がお店に飛び込んで来て、カウンターに座り、ニラレバ炒め定食を注文した。
ああ、間が悪かったな、とマスターに同情する。
ニラレバ炒めを作って、カウンターの客に出してから、マスターはやっとラーメンを食べはじめたようだが、おそらく麺は伸び、スープも冷めきってしまっていたのではないだろうか。
こういうタイミングの悪さは、誰しも経験するものだ。
帰りに、コンビニに寄って買い物。
店内のパンのコーナーで腰の曲がったおばあちゃんが、「ジャムパン、ジャムパン、ジャムパンは‥‥‥」と言いながら、棚を探している。
下の棚にジャムパンがあったので、
「ここですよ」
と教えてあげると、
「ああ、よかった。2個ある?」
と言って、棚の奥を覗き込む。
ジャムパンはちょうど2個残っていたので、おばあちゃんはそのジャムパンをカゴの中に放り込んでいたが、カゴは野菜やカップ麺、缶詰などで一杯になっていて、明らかに重そう。
おばあちゃんは、「ううう‥‥‥」と言いながら、満杯のカゴを持ち上げた。
これはちょっと大変だろうと思い、
「レジまで運んであげますよ」
と言って、カゴをレジまで持って行った。
レジにいた顔見知りの店員さんに、
「よろしく」
と声をかけて、店員さんもにこやかに対応。
しかし、自分の会計を済ましてふと気がついたのだが、あれだけの重い荷物を、おばあちゃんはどうやって持ち帰るのだろう、とまた心配になってきた。
自分より先にコンビニを出ていたので、おばあちゃんを探してみたが、その姿は見当たらなかった。
あんな重い荷物を、どうやって運んだのか。
自転車で運ぶにしても、あの量だとおそらく男性でもバランスが取れないと思う。
では、おばあちゃんは自前のクルマで来ていたのだろうか。
しかし、そんなクルマはコンビニの前には見当たらなかった。
タクシーを拾うにしても、この辺りは滅多にタクシーが来ない。
キャリーバッグもなかったようだし、どうも妙であった。
急に姿を消したというのも、気になる。
考えられるのは、このコンビニのすぐ近くに住んでいるということである。
例えば、コンビニの入っている建物の上に住んでいるとか。
それなら、コンビニから出てすぐ横にある建物の入り口に姿を消すこともある。
そんなささやかな謎解きをしながら、公園の前を通る。
公園の方を見ると、ベンチの上でランニング姿の子どもが片腕だけで腕立て伏せをしていた。
こちらが見ていただけで、少なくとも軽く10回以上は腕立て伏せをしているようだった。
自分にも経験はあるが、片腕の腕立て伏せはキツいし、腕立て伏せをやり慣れていないと難しいものだ。
しかし、その子どもは軽々と腕立て伏せをしている風に見える。
それにしても、子どもがなんでこんなところでトレーニングをしているのだろう、と引き続き見ていたら、実は子どもではなく、小柄な大人の女性であることに気がついた。
よく見ると、腕や足、肩の筋肉がすごい。
何者かわからないが、体を鍛えている人なのであろう。
考えてみれば、コンビニにいたおばあちゃんもあの程度の荷物など軽々と担げるほどのすごい力持ちで、店を出た後は駆け足で家に持ち帰ったのかもしれない。
昔の農家の女性で、米俵を何俵も軽々と担げる人もいたというし。
夜は、湯豆腐を作って晩酌する。
気が付かなかっただけだが、豆腐に豆腐とは、これもまたオツなものかも知れない。