正月気分も終わり、街にはようやく日常が訪れ始めたようである。

 

 昨年末からお正月にかけては、レンタル店で何点ものDVDを借りてきて鑑賞した。

 

 その中で、最初はあまり期待していなかったが、観終わってから好きになった映画があった。

 

 デヴィッド・ロウリー監督の『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』(2017年)という作品で、主演は「オーシャンズ」シリーズで知られるケイシー・アフレックと、『ドラゴン・タトゥーの女』でリスベットを演じたルーニー・マーラ。

 

 簡単にどんな映画かを紹介すると、田舎の一軒家に引っ越して来た若夫婦だが、突如として夫が自動車事故で死亡、その夫が幽霊(海外のマンガによく出てくるような、頭から白いシーツをかぶったヤツ)となって家に戻り、妻のことを静かに見守る‥‥‥うちに、妻は家を出て行ってしまう。それでもその家に棲み続ける夫の幽霊。やがて夫の幽霊は地縛霊(?)と化し、その家が取り壊されても同じ場所に居続けて‥‥‥。

 みたいな展開で、紹介の仕方が下手だったかも知れないが、後半になると時空を隔てた壮大な物語になってしまう。

 

 淡々と流れゆく幽霊の見ている光景が、切なくて寂しく、幽霊の寂しさや悲しみが伝わって来るようだ。

 

 ダニエル・ハートの音楽も作品にマッチしており、これは幽霊視点の環境ビデオか? とすら思えてしまう。

 

 それにしても、幽霊役のケイシー・アフレックは、代役なしでずっと白いシーツを頭からかぶって演技したのであろうか。

 あちらの役者さんは、役作りで太ったり痩せたりもあって大変だが、これはこれで大変だったことだろう。

 

 そういえば、主人公幽霊のいる家の向かいの廃屋に棲むやはり白いシーツ姿の幽霊は、「ティック・トック」などで知られる歌手のケシャが演じている。このシーツ姿では誰がやっても同じだと思うのだが、しかしそこがこだわりなのだろうか‥‥‥。

 

 もし今夜、誰もいないのに壁をたたくような音が聞こえたり、何もないはずの空間を飼い猫がじっと眺めていたりしたら、そこにはこんなに寂しくて心優しい幽霊が、じっと佇んでいるのかも知れない。

 

 幽霊が怖いと思っている人も、この映画を観たら、幽霊のことが好きになってしまうかも‥‥‥。

 

・『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』サウンドトラックより