元旦。

 

 コンビニで注文したおせちを開く。

 

 以前は近所の小料理屋さんで、常連さん限定のおせちを頼んで大晦日の日、取りに行っていた。

 

 小料理屋は、お店のおかあさんが高齢のため何年も前に閉店してしまって、そのおせち料理も食べられなくなったが、おかあさんの丹精込めたおせちを思い出す。

 

 おかあさんは北海道の人だったので、鰊の昆布巻きやご飯に乗せても美味しいたっぷりのいくら醤油漬け、すだちの香る数の子、彩りのよいうま煮、大粒の黒豆、たらことこんにゃくの和えたものなど、珍しい品がたくさん入っていて、暖かいお正月を過ごせた。

 

 楽しみだったのは、おまけについていた「口取り菓子」と呼ばれる鯛や海老、松茸などをかたどったミニチュア和菓子の詰め合わせで、これは北海道ではおせちと一緒にいただくものだということだった。

 

 おかあさんは、東京の人にも北海道の気分を味わってほしいと、こちらでは売っていない「口取り菓子」をわざわざ取り寄せて、おせちに付けてくれていたのだ。

 

 そのお店がなくなってしまってからは、銀座の有名店のおせちなどを注文していたが、なんとなく発注が面倒臭くなって、その後はお正月も普段と変わらない食事となってしまった。

 

 そんなことを思い出しながら、感動のなかったコンビニのおせちをつついた。

 

 その元旦の午後、うたた寝をしてこんな夢を見た。

 

 どこかの大きな森の手前に建っている、昭和初期風のモダンなお屋敷。

 

 その中に入って、その家の主人らしき人物と何やら相談している。

 

 どうやらこの家には、とてつもなく恐ろしい魔物が棲み付いているというのだ。

 

 その魔物を追い出すため、数名のゴーストバスターズのようなチームは、「トルソ」と呼ばれる長身の彫像をあやつり、その家に巣くう魔物を追い払う。

 

「トルソ」は、自分の意思で動いている様子で、天井や壁に潜んでいる目に見えない魔物を捕まえて、握りつぶした。

 

 やがてこの出来事は、実は1本の動画であることがわかる。

 

 YouTube動画のようなもので、タイトルは漢字2文字にひとつのひらがなで表現されていたのだが、目が覚めてから、そのタイトルがどうしても思い出せず、散々思い出して浮かんだその夢に現れた動画に一番近いタイトルは、「幻の森の家」だった。

 

「幻の家」だとちょっとニュアンスが違ったし、やはり「幻の森の家」が夢の中の動画のタイトルに、印象が近いものだったろう。

 

 また奇妙な夢を見たものである。

 

 まあ、夢の中で見た奇妙な動画ということになるのか。

 

 コンビニおせちの後は、ショートケーキなどの甘いものを食べてから寝た。