お昼頃まで、雨が降ったりやんだりと、なかなか外出のタイミングが定まらない。

 

 しかたなく、小降りのときを見計らって外出。

 

 傘をさして、駅まで向かう。

 

 今日は久し振りの友人と会うので、お気に入りの寿司店でお昼を食べることになっていた。

 

 ここの寿司は、柑橘系の果汁をかけて塩で食べるのが美味しい。

 

 白魚、ホタルイカ、ブリカマ焼き、後はスミイカ、タコ、イワシ、大トロ、アナゴ、ウニ、ウナギの白焼きもあったので注文。

 

 和の味覚を堪能する。

 

 友人のSくんは、あまりお酒は飲まないほうだったが、今日はこちらに付き合ってくれる。

 

 日本酒を一口飲んだだけで、彼の顔色がうっすら赤くなり、機嫌が良くなって来る。

 

 Sくんは地方在住であるが、たまたま東京出張中で時間が合ったのだ。

 

 お互いに仕事の話は一切出ず、笑い話が続く。

 その方が、気が楽である。

 

 Sくんとはそのまま駅の改札で別れたが、もうちょっと付き合ってあげたらよかったかな、と後悔する。

 明日の早朝、新幹線に乗るそうである。

 

 帰宅後は窓を閉めて、音楽を聴きながら横になる。

 

 友人の話を思い返していたが、どことなく自虐的な内容が多く、少し彼に同情してしまう。

 

 彼と家族との確執の話が、一番胸に響いた。

 

 奥さんや子どもたちに邪魔者扱いされているという、よく聞く話ではあった。

 それをSくんは、笑い話にしていた。

 

 しかし、Sくんの寂しげな笑顔を見ていると、なんとなく胸が痛くなるのであった。

 

 学生時代は利発でセンスのいい人だったが、どうしてしまったのだろうか。

 

 コンビニで買ったビニール傘を大切そうに手にし、駅の改札をくぐって群衆の中に消えて行くSくんの後ろ姿がふと浮かんだ。

 

 夕方から、風が強くなって来る。

 

 部屋の明りを落として、すべての無事を祈った。