梅雨空の隙間から、ときたまお日様が覗く。
少し陽でも浴びに行こうと思い、自転車に乗って外出する。
たまたま通りかかると、廃屋の庭草が刈り取られていた。
この前まではうっそうとした蔦が建物に絡まり、背の高い雑草が生い茂っていたのに、きれいさっぱりなくなっている。
すっきりとしたその庭を眺めていると、赤い鞠つきのボールがポツンと転がっていた。
長らく庭にあったのだろう、ボールは色あせて艶もなくなっている。
ここの住人の子どもが遊んだものだろうか。
現役時代は勢いよく跳ねて、子どもたちのお相手をしたのだろうが、今はこうして静かに廃屋の庭に転がっている。
しんみりとそう思っていると、家の方に動くものが見えた。
家には鉄製の非常階段があり、その階段の途中で白いネコがひなたぼっこをしていたのだ。
ネコは毛が長くペルシャのようなのだが、手入れがされていないので薄汚れている。
ノラネコなのだろうか。
声をかけると、ちらりとこちらを振り向いたが、すぐ背中を向けてゴロンとした。
梅雨の晴れ間をかいくぐり、ひなたぼっこをしているのだろう。
この廃屋に棲みついたネコなのだろうか。
しばらく様子を見ながら、そのネコについて思いを巡らす。
いつからここにいるのだろうか。
ノラネコになる前は、飼い主がいたのだろうか。
そのぺしゃんこの鼻で、今までどんな匂いをかいできたのだろうか。
子どもはいたのだろうか。
恋はしたのだろうか。
まどろみの中、どんな夢を見るのだろうか。
そんな事を考えていたら、ネコはゆっくりとこちらを振り返り、フンッというような表情で一瞥して、また背中を向けた。
ネコのふわふわした尾っぽが、リズムを取るように動いていた。
むくむくの白いネコと、庭に転がったままの赤いボールは、ちょっといいコンビのように思えた。