以前刊行された『はるかな旅:岡上淑子作品集』(河出書房新社・刊)は絶版のため入手困難となっていたが、このたび新たに岡上氏の現存作品150点を収めた決定版作品集『岡上淑子全作品』(河出書房新社・刊)が刊行された。
コラージュ作品128点と写真22点に併せて、自筆テキスト、年譜、所在不明作品一覧など岡上淑子関連資料も収録されており、充実した内容となっている。
高知県立美術館で開催された「岡上淑子コラージュ展—はるかな旅」の公式図録でもある。
1928年、高知県高知市生まれの岡上淑子(おかのうえ・としこ)氏は1950年に文化学院デザイン科に入学、その授業の一環でフォトコラージュを知る。
写真を自由に切り貼りして、全く別のイメージを生み出してゆくコラージュの技法に取り憑かれ、当時進駐軍が置いて行った『ヴォーグ』や『ライフ』などのファッション誌やグラフ誌の写真を元にコラージュ作品を制作する。
それらの作品は詩人・美術評論家の瀧口修造に激賞され、1953年に瀧口が企画を任されていた前衛芸術の牙城、タケミヤ画廊で個展を開催した。
1957年、シュルレアリスム系画家、藤野一友と結婚。結婚後は次第に創作から離れて行き、藤野と離婚した後は出生地であった高知県に転居、やがて時の流れと共に岡上淑子の名前は美術界から忘れ去られて行った。
しかし90年代後半辺りから、写真史家らの発掘によりその作品が一躍注目を集め、“幻のフォトコラージュ作家”として国内外で知られるに至る。
岡上氏が活躍したのはわずか7年あまりであったが、その長くはない期間に制作された作品群は、時代を感じさせないファッショナブルなイメージに満ちあふれており、初めて見た者の心を鷲掴みにするかのようである。
どこか儚げでロマンチックな夢幻のような岡上淑子の世界が、特にこの時代になって人々の興味を惹くのは、画家マックス・エルンストやハンナ・ヘッヒなどのダダイスト、シュルレアリストが試みたコラージュとはまた違った、戦後日本の開放感から誕生した、懐かしくも鮮烈で軽やかなイメージが内包されているからかも知れない。