⚪ 筋線維の受動的 (他動的) 張力増強


筋節のI帯領域のコネクチン/タイチンには免疫グロブリン様のドメインが多数あり、この部分は折りたたまれている。


また、免疫グロブリン様のドメインに挟まれているA帯に近い領域にあるPEVKドメインはスプリングのような性質を持つとされる。


PEVKドメインの長さは筋によって異なるようで、ヒラメ筋ではPEVKドメインがかなり長いため、かなり伸長させても張力は発生しない。


このようにコネクチン/タイチンはいわばスプリングあるいはゴムのように働くことで、受動的伸長にたいして張力を発揮する。


コネクチン/タイチンの張力発生機構は、コネクチン/タイチンのZ線に付着するN末端近くにあるZ1Z2ドメインで詳細に検討されている。


Z1ドメインとZ2ドメインは免疫グロブリン様のドメインで、降りたたまれており、2つのドメインの間は直線的なインタードメインで結ばれている。(Fig.3-A)


Z1ドメインとZ2ドメインはインタードメインを中心にV字型をなしているが、筋が引き伸ばされた時にはV字が平らに引き伸ばされることで張力が発生する。(Fig.3-B)


Z1ドメインとZ2ドメインの折りたたみが引き伸ばされるのではない。


また、トロンポニンはアクチンフィラメントに含まれ、カルシウムが結合し、ミオシン頭と架橋関与する調節タンパク質である。


単一の筋原線維のトロンポニンを消化することで、アクチンとミオシンの間の収縮ができない状態として引き伸ばすと、次第に張力の増強が見られる。


この張力はカルシウム濃度をあげるとさらに増強する。


このことから、アクチンだけでなく、コネクチン/タイチンにもカルシウムの結合部位があり、コネクチン/タイチンの硬さを変化させると考えられている。


未だにコネクチン/タイチンの筋トレ伸長に抵抗する張力の機構は詳細に解明されていないものの、コネクチン/タイチンが筋の受動的伸長に対してスプリングのような働きをすることは間違いなさそうである。


※ 以上

骨格筋収縮に関与する弾性タンパク質

コネクチン/タイチン

渡辺正仁、早﨑華、柚留木裕子、玄安季、橋本遵一

保険医療学雑誌 8 (2) より


⭐ いわゆるウェイトトレーニングは、ミオシンとアクチン間の収縮です。


しかしミオシンとアクチンが収縮できない状態まで引き伸ばした、コネクチン/タイチンのトレーニングは、ほぼ成されていないのが現状であります。


ミオシンとアクチンの収縮が及ばない、受動的な筋収縮です。


物理的な張力なので、エネルギー消費量は低い、効率良い動きです。


受動的な筋ポンプの働きにより、血流が促され、柔軟性も改善される。


特に、限界を追求する競技動作は、反動を伴い確実に頻繁に、コネクチン/タイチンの張力を発揮することになります。


一般人にとっても、無駄がない柔らかい健康な動きでもあります。


ミオシンとアクチン収縮に重きを置く強化?した選手が、ミオシンとアクチンの収縮が及ばない状態に引き伸ばされたら…。


ミオシンとアクチン収縮力が向上し、筋肥大して逞しい選手達の壊れるのは、本当に忍びない。


遠心性収縮(eccentric contraction)で、コネクチン/タイチンの弾性力を身に付け、頑丈な身体を作りましょう。