ねえミッキー


書き忘れていたことがあったよ

この間 コロンビアのラウンジで あの子にあったんだ

ガアガアうるさい おしゃべりな アヒル野郎の恋人だ

僕はアヒルは好きじゃないけど 彼女のことは嫌っていない

チャーミングだし センスもある 少しばかり化粧が濃いけどね

でもそれも悪くない 濃い化粧にも良し悪しがある


彼女と一緒に少しお酒を飲んだんだ 彼女はアヒルの悪口ばっかり

言っていたよ もうすぐ別れるかもしれないとも話していた

僕はなんて言っていいかわからなかった いくらアヒルでも

恋人に捨てられてしまうのは かわいそうだからね


僕はウイスキー 彼女はカクテルを飲んで 少し気持ちがよくなった

ラウンジを出て 近くにある噴水のところで また少し話した

それから なんとなしにキスをしてしまったんだ

彼女からの…… いや うん 僕からのキスだね 正直に言うよ

僕は彼女と寝たくてたまらなかった すぐ近くにはクラシックなホテルもあったし


だけど 彼女はキスまでは許してくれたけど それ以上は 

うん わかるだろ ミッキー


でも 今度映画を見に行く約束をしたんだ 

こんなに胸がドキドキするのは ティーンの頃以来だよ

アヒルには悪いけどね まあ仕方ないさ


ねえミッキー


実のところ きみについての本を書こうと思っていたんだ

無名なきみがスターになるまでを書いた とてもシリアスな本だ

それなのにきみのエージェントへ連絡をしたら そういった本は

許可をしてくれないそうだ

いくら僕がきみの友人だと言っても取り合ってくれない

新聞紙とドーベルマンの区別もつかないような秘書に いったいいくら給料を払っているんだい?

僕だったらさっさと首にして 机の上にピクルスの瓶詰めでも置いておくさ

その方がストレスもかからないし 腹が減ったらかじることができるだろ?

最初からきみに連絡すればよかったんだ だけどそういうのって 照れくさいもんな


ところでいま ちょうどタバコが切れてしまってね だからシケモクを吸ってる

きみは僕がシケモクを吸うのを好んでなかったね もちろん僕だって好きで

やってるわけじゃない ニコチン中毒の哀れさってことなんだよ

じゃあきみに教えよう


まず灰皿の吸殻から まだ吸えそうなやつを選ぶ なるべく長いやつだ


それから 先端を指で摘むようにして 黒くこげた部分を 押し出す


そして 火をつけて 吸う


どうだい 簡単だろう? きみはもうタバコをやめたから必要ないもしれないけど

こういったことは 覚えておくと便利だぜ

今度ハマキの吸い方を教えてくれよ それがギブアンドテイクってやつだものな



ねえミッキー

僕の住む街から しばらく行った先に 火山があるんだ
いつも煙を噴き出していて 誰が見ても
こいつは やばいと思わせる巨大な火山だ
こんな物騒な物があるものだから まともなやつは
このあたりには 住まない

僕はどうかって?
よせよミッキー わかるだろ? (きみだって十分クレイジーだぜ?)


火山に近付くと いつも地鳴りみたいにして 妙な音がしてる
なんでも 僕やきみよりクレイジーなやつが
火山を機械でほじくりかえしてるって噂だけど
さすがに それは誰かがパブで言ったジョークだろうね


火山にいったのは まあ 取材のためなんだけど
火口を見ていたら 飛び込みたくなってさ


人は死に呼び寄せられるんだろうか?
僕は何度も頭の中で 火口に飛び込むところを想像した

でも実際はしなかったよ

もしできてるのなら
もうとっくの昔に飛び込んでるものな

でも家に帰って 机を前にすると
取材なんて なにひとつとして してはいなかったってことがわかるんだ


そうなんだよ

実際 死にに行ったのさ


果たされなかったがね