ねえミッキー

いまアリスはベッドで寝てる
僕はデスクランプをつけて 小さな灯りでこの手紙を書いてる

アリスはとてもいいこだ アヒルのことはやはり気にしているみたいだけど
アヒルの死んだ日に泣いて以来 悲しそうなそぶりはみせてはいない


なんだか今日は眠れない
いつもとなにかが違う気がするんだ

久しぶりにパソコンをつけると メールでアヒルから遺書が届いていた
うんざりした気持ちになったから まだ読んでないけどね

それにしたって なんで 僕になんて遺書を送ったりするんだろう
わけがわからないよ
まるで世界中が僕に 悪い冗談を言って 驚かせようとしてるみたいだ



僕はアリスを起こさないようにして アパートの外に出た

その時に気が付いたんだ

何年も降り続いていた雨が ぱたりとやんでいた

ねえミッキー

悪い冗談はもうこりごりだってのに

まさかきみが魔法でどうにかしてるわけじゃないだろう?

なにかが起こりそうな気がするんだ


ねえミッキー

僕はアヒルの彼女と付き合うことになった
それから僕は彼女に新しい名前をつけたんだ

新しい名前を貰った彼女は幸せそうだった
アヒルが死んだのに幸せそうなんだ
空元気なのか そうじゃないのか
僕にはわからないよ


新しい名前の彼女は僕の家に転がりこんできて
掃除をしたり食事を作ったりしてる
夜は古いレコードをかけて キスをする

ねえミッキー これは僕が求めていた 生活なんだろうか
僕は新しい名前の彼女を見ながら アリスのことばかり 考えてる

新しい名前の彼女はアリスのことは知らない
僕が恋人を失ったことなんて知らないんだ


ねえミッキー
僕は彼女に なんて新しい名前をつけたと思う?


そうだよ


アリス だよ
ねえミッキー

あのガアガアうるさいアヒル野郎が死んだよ

病室の窓から飛び降りたらしい
なんであいつがそんなことをしたのか 僕にはわからない
それはもう 誰にもわからないんだ
あいつが抱えたまま 飛んでいっちまったからね

さすがに僕も良心が痛むよ
あいつが手首を切ったり入院してる最中に やつの彼女と寝ていたんだからさ

彼女は僕の部屋にきて アヒルが死んだことを告げて泣いた
どうして泣く? 僕と寝たり あいつと
別れたがっていたのに なぜ泣くんだ

女の考えていることはわからない

彼女は名前を欲しがった
「アヒルの恋人」以外のなにかをね
そうすることで 過去から逃げられると思ったんだろう
もちろん そんな方法じゃあ 明日は生き抜けない