撮影日   2022.5.29

撮影場所  JR東海飯田線 飯田駅及び車内

 

前回に続き一昨年乗車した飯田線の記事です。

今回は長かった旅行のラストランナー・飯田線の看板列車

特急「伊那路」に使用されている373系の紹介です。

 

(一枚目)

・飯田駅まで乗車してきた313系と並んだ「伊那路」用373系

F5編成です。

特急「伊那路」は豊橋駅から飯田駅間で1日2往復運転されており、

飯田線唯一の優等列車です。去る2022年3月11日までは「ワイド

ビュー」の冠詞が付いていましたが、翌日の改正でJR東海の特急

列車は一斉に「ワイドビュー」の愛称が廃されました。

 

373系は老朽化した165系使用の急行列車を置換える為、1995年

から3両編成14本が導入されました。

本形式は急行「東海」「ふじかわ」「伊那路」の特急格上げ、及び

伝統の夜行列車・通称大垣夜行の代替として設定された快速「ムーン

ライトながら」に使用される事を目的としており、普通車モノクラス

且つ短編成での運用も可能としており、更に普通列車での運用も考慮

ドアが1300㎜サイズの両開きとなったのが特徴で、近郊形と近い

仕様で185系電車に通ずる所が有ります。又グループ利用も考慮し

一部車両にはセミコンパートメントが設置されました。

車体は軽量ステンレス車体、前面は貫通スタイルとなっており

フレキシブルに編成が組めます。

 

当初は「東海」「ふじかわ」「伊那路」「ムーンライトながら」に

使用された他、想定通り一部普通列車にも充当されました。

又間合い運用で「ホームライナー」にも使用された他、一時的に中央

本線の「セントラルライナー」にも使用されました。

但しその後使用列車は縮小が続き、2007年に伝統の「東海」は廃止、

「ムーンライトながら」は臨時列車化と車種変更で2009年に撤退、

その後も東京口の乗り入れは普通列車で継続していましたが、

2012年に廃止され長く続いたJR東海車の東京駅乗り入れ(新幹線・

サンライズ除く)は消滅しました。

近年は上記2種類の特急列車はホームライナーの他、一部普通列車にも

使用されており、運用に余裕が出来た為臨時列車にも多く充当されます。

383系は置換が発表されましたが、本形式の置換の話は出ていません。

支線区向け且つ近郊形との折衷タイプという特殊車なので、今後も

長く使われるかも知れません。

(二枚目)

乗車列車は「伊那路」4号 豊橋行きで、1号車の全車と

2・3号車の車端部コンパートメントが指定席でした。

編成は飯田方から1号車で、クハ372-5+サハ373-5+クモハ

373-5の3両編成でした。

このF5編成は1995年日本車輛製の初期車で、当初「ふじかわ」

向けだった為JR東日本エリア直通用のATS-Pは後年の設置です。

 

写真はクハ372-5で、側窓はワイドビューの名前らしく大型の

固定窓で連続スタイルになっています。

ビード付きの軽量ステンレス車体で、行先表示器は幕式です。

制御車には車椅子対応トイレ及び洗面所が付き、CPを搭載します。 

(三枚目)

本形式の最大の特徴、ワイドビューならぬワイドドアです。

特急形は定員制乗車を前提とし、幅が狭い片開ドアを採用する

例が多いですが、本形式は設計思想上ワイドドアを各車2か所

設置しています。この点は185系よりもより近郊形らしいです。

この1号車は車椅子対応車ですが、他の車両と同じ幅です。

又もう一つの特徴として、特急形では余り見かけない半自動用の

押しボタンが付いているのも見逃せません。

 

(四枚目)

 

・中間車、サハ372-5です。サハとクモハには車端部にセミ

コンパートメントが設置されており、この様にドアで区切られて

います。

サハには発電ブレーキ用の抵抗器が設置されています。

(五枚目)

こちらは制御電動車、クモハ373-5です。本形式は伝統の

イラスト入りヘッドマークを現在も使っており、近代的な

スタイルながら親しみやすさを感じます。

シングルアームパンタを備え、制御装置と補助電源を持ちます。

パノラミックウインドウを採用した貫通スタイルは、153系以来

続く東海形の伝統と言えるかも知れません。

 

373系の足回りはTD平行カルダン駆動で、モーター出力は

185kwで1M2Tでの運用が可能となっています。

制御装置は383系に続きGTO素子のVVVF制御となりましたが、

東海のGTO車はこの2形式に留まりました。

ブレーキ方式は回生・発電・抑速ブレーキ併用の電気指令式空気

ブレーキで、台車はヨーダンパ付きのボルスタレス式空気バネ

台車C-DT63(付随台車はC-TR248)です。

最高速度は110km/hです。

(六枚目)

続いて車内です。

「ワイドビュー」を名乗っていただけあって運転台は割と

眺望に配慮されており、助士側の窓が拡大されています。

仕切り扉は奥に引っ込んでおり、隅部の窓はパノラミック

ウインドウです。

ワンハンドルマスコンが採用されています。

(七枚目)

1号車、クハ372-5車内です。

本形式は基本的に2-2列回転リクライニングシートとなっており、

クハ372形の定員は52名です。シートピッチは970㎜で、同じ

東海の特急形電車・383系は1000㎜なので微妙に狭いです。

もっとも置換えたのがBOXシートの165系なので、大幅に

サービスアップになった筈です。

(八枚目)

反対側から見た1号車の車内です。車端部の座席は車椅子

対応の1人掛けとなっています。

そして写真で分かる様に、本形式は簡単な仕切りは有るものの

扉は設置されていません。通勤輸送に対応したものですが、

端の座席だと落ち着かなさそうです。

ドアが特急車両では珍しく半自動式になっているのはこれが

原因です。

(九枚目)

2号車サハ372-5の車内です。

車椅子対応席が無い以外は変わらず、定員は68名となっています。

373系の車内は平天井でラインフロー式、照明はカバー付きです。

天井は白で壁は窓の下が濃い紫です。床は通路部はグレーの大理石

模様、座席下は茶色です。荷棚は格子タイプとなっています。

カーテンは横引き式です。

(十枚目)

1号車、クモハ373-5車内です。こちらは定員60名です。

座席モケットは各車変わらず茶色で、白いカバー付きです。

車端部にはLED式の案内装置が付いています。

夕方の列車で、各車とも乗車時は大分空いていました。

(十一枚目)

2号車と3号車の車端部に設置されたセミコンパートメントです。

写真は2号車のもので、各車共4人BOXが2組設置されています。

座席自体は一般席と変わらない様で、大型のコンパートメントが

設置されています。

 

この空間はデッキと貫通扉に挟まれているので確かに個室的な趣

ですが、デッキには扉が無くアクリル製の仕切り板で内部が見え、

且つ各BOXには仕切りが無い為、実質ただのBOXシートです。

グループ利用で天竜川や富士川を眺めて旅行したい向きには

良さそうです。

貫通扉の窓は大窓で、仕切りにはLED式の号車及び指定席表示器が

内蔵されています。

(十二枚目)

373系の特徴、ワイドドアの内側です。

窓サイズが小さいのが特徴的で、しかも中央に寄っています。

余り見ないスタイルで、ここはワイドビューでは有りません。

内張はグレー系となっています。

(十三枚目)

373系は制御車にのみ、トイレや洗面所が設置されています。

ここは洗面所で、流石に特急列車らしく設置されています。

奥は確認を忘れていましたが、かつて公衆電話が付いていた

ので、公衆電話ブースだったかも知れません。

(十四枚目)

トイレは大型の洋式で、車椅子対応の物になっています。

各車に付いていた165系時代に比べると数が減りましたが、

和式の165系よりも快適になったのではないでしょうか。

飯田線も身延線も揺れそうですし…。

(十五枚目)

今回は3号車のクモハ373-5のセミコンパートメントに

乗車しました。同行者2名で豊橋駅までまったりの乗車です。

GTOの甲高い音を聞きつつ、列車はゆっくりと進みました。

 

次回に続きます。

 

参考文献  JR全車輌ハンドブック2004

 

参考HP   ウイキペディア 関連ページ