撮影日   2024.1.21

撮影場所  熊本市交通局健軍線 健軍町電停及び車内

 

先日熊本を訪れた際、やっと撮影出来た日本初の超低床車

9700形のトップナンバー車のリニューアル後の姿です。

何度も熊本に通いましたが、やっと乗車も出来ました。

 

(一枚目)

・B系統 健軍町行きで到着した9701号です。

この健軍町電停はA/B系統共に終点となっており、熊本市東部の

拠点と言える場所ですが双方の系統の電車が発着する為昼間

でも電車が団子状態になっていました。

9701号がいる場所が降車ホームで、左に進んだところが乗車

ホームですがそれぞれ1線しか無く、又乗車ホーム付近は単線の

為開通待ち状態です。

「あんしん財団」ラッピングの1200形は乗車ホームから出発し

田崎橋に向かう電車で、9701号の奥にも降車ホーム進入待ちの

1090形が見えます。

更にこの付近は交通量が多い県道ですが1車線の為、余計に

混雑しています(電停から歩道へは信号も無い)。

(二枚目)

9701号は現在広告ラッピングとなっています。

9700形については以前この記事で紹介しています(2023.11.4)。

2023.10 阿蘇・日田旅行(熊本市電新旧連接車編) | 303-101

のブログ (ameblo.jp)

 

1997年から5本が製造された日本初の100%超低床式路面電車で、

2車体連接式ですが編成全体で2台車となっていて各車の車体

中央部に台車を設置し、特殊構造の台車・駆動方式で低床化を

行っています。

AEG社(現 アドトランツ)の機器と新潟鐵工所(現 新潟トランシス)

製車体を組み合わせたもので、日本の路面電車界に久しぶりに

海外からの風が吹きました。その後広電を始め日本全国に超低床車

導入が行われ、国産メーカーが様々な車種を展開するようになった

契機を作った記念すべき車両です。

(三枚目)

2車体の内手前のパンタの無い側がB車・パンタの有る側が

A車となっています。

ドアは各車1か所ずつで大型窓の両開きプラグドアです。

側窓は大型窓で上部が内折れ式になっています。

製造時からシングルアームパンタを採用しています。

 

5本製造された9700形の内、この編成は他の編成と仕様が違い

行先表示器はLEDを採用していました。日本の路面電車では

初採用でしたが見にくかった記憶が有ります。

塗色も白ベースで車体裾に青のグラデーションの帯が入り、

屋根肩も青く塗られていました。

後継の0800形導入後も肩を伍して活躍していましたが、

2012年から故障でずっと上熊本車庫で休車となっていました。

後に9702・9703も休車となり、一時期9700形の稼働率が

大変低い状態が続いていました。

(四枚目)

・A車側の姿です。左奥の上屋が乗車ホームです。

超低床車でも側面にサボが設置されているのが熊本市電らしい

姿ですが、後年の設置(リニューアル時)です。

 

長く休車となっていた本編成ですが、同じく運用を外れていた

連接車5000形(元西鉄福岡市内線1000形)の改修・運用復帰に

続き2019年にリニューアルされて復帰しました。

その際制御装置等のドイツ製部品は国産に交換されており、

参考文献掲載の登場間もない姿と比較すると運転台上部の白い

カバーの機器が撤去、その他の機器類も交換されて形態が

変わっています。行先表示器は市電初のフルカラーLEDとなり、

大変見やすくなりました。後に8500形ロング改造車でも施工

されています。

塗色は屋根肩の帯は無くなり、裾の青帯は単色となりましたが

すぐにラッピングされてしまいました。

2022年撮影時とデザインが変わっていました。

一方前照灯は1・2枚目を見るとLEDでは無い様に見えます。

 

尚今後熊本市電では9700形の内3本を機器更新等で延命する

方針の様で、9701編成は既に施工済みとみて良いでしょう。

一方9702・9703編成は訪問時も上熊本で休車中で、廃車

予定とされており明暗を分ける結果となりました。

(五枚目)

続いて車内の様子です。

タイヤハウス部はクロスシートで一部は向かい合わせタイプが

混在し、ドア付近はロングシートです。座席数が少ないのは

超低床車でよく見られる悩みです。

天井は平天井ですが一部は機器の張り出しで低くなっています。

吊手はオニギリ型で、液晶式の案内装置を持ちます(市電は

均一運賃の為停留所案内等がメイン)。

(六枚目)

車掌さんが乗務する為車掌スペースも有ります。

ICカードに加えQR決済やクレカタッチ決済も可能な運賃箱に

なっており、更に顔認証システムも行っていました。

 

リニューアル時に車内も綺麗にした様ですが、大きく手は

加えられていない様です。壁はグレーのFRP?の為か元のままの

様です。貼り紙をずっと貼っていたと思しき跡も有りました。

床は濃いグレーですが元々この色だった様です。

モケットは元は青色でしたが、近年市電で増殖している緑系に

変更され、優先席は青色です。手すりはグレーです。

LED照明に改造されたかは分かりませんでした。

尚9700形の内装は編成によって違います。

(七枚目)

クロスシートです。この様に向かい合わせの席と、5枚目

に見えるロングシートに向き合った席が有ります。

どちらも座面は薄く背もたれも低いもので、座席数捻出の為

工夫したものでしょう。もっとも路面電車で知らない人と

向き合うのは嫌がられそうです。尚全て1人掛けです。

足元に見えるのはヒーターで注意書きも有ります。

 

市電のクロスシート車は8200・8500形で1人掛けの転換クロス

シートが採用されたのが初でしたがその後途絶え、9700形で

この様な固定クロスシートを採用して久々に復活しました。

但し8500形は近年転クロ撤去・座席半減という悪夢を経て

オールロング化されてしまいました。

(八枚目)

運転台側ドア向かいの座席は折り畳み式のロングシートで、

車椅子対応席です。明らかに薄い座席です。

市電では非超低床車の9200形から車椅子対応座席を設けて

おり、バリアフリーへの意識が高い事業者です。

(九枚目)

運転台側ドアの床は車椅子対応で上下に動くリフトだそうで、

使用時は停留所と同じ高さまで下げられるようです。

実際使用時を見た事は無いですが、動作を見てみたいものです。

(十枚目)

前面窓は大型の1枚窓で、大変見晴らしが良いです。

運転席部は少し高くなっています。

パネルタイプの運転台は大変近代的ですが、受話器は車掌との

通話用でしょうか。ウイキペディアの写真では無いので後年

追加したと思われます。

(十一枚目)

市電初のワンハンドルマスコンを採用しており、右側通行の

ドイツ式の原型から左側通行の日本仕様に合わせた機器配置です。

モニタ装置も設置されています。

(十二枚目)

行先表示器の対照表です。

よく見ると「神水交差点」「河原町」「辛島町」「段山町」

「新水前寺駅」発着と言った余り見ない系統が収録されて

いますが、注目は「COCORO 貸切」と言った様に「COCORO」

関係の表示が入っている点です。

「COCORO」0803号車と設定を共有しているのかも知れませんが、

こちらはフルカラーLEDに対し向こうは従来タイプのLEDです。

LED車で共有しているのなら他のLED車、まさかの8500形にも

入っているのか?

 

あるいは市電では超低床車を「COCORO」仕様に統一する計画が

有った様で、その一環かも知れません。

もっともリニューアルされたにも関わらず濃茶色で「水戸岡

デザイン」の「COCORO」とは全く異なるデザインで、且つ

今後の新車(恐らく2400形)のデザインも白系なので上記の計画が

まだ存在するのか疑問です。

(十三枚目)

最後に、9700形の記念すべき受賞類です。

右上にはお馴染み「ローレル賞(1998年受賞)」のプレートが、

そして中央には「第19回国際交通安全学会賞」の賞状が

掲げられていました。

本形式が日本の路面電車界に与えた影響の大きさが改めて

分かります。

 

以上です。

 

参考文献  鉄道ピクトリアル NO.688 2000.7

                  【特集】路面電車~LRT

 

参考HP  熊本市交通局経営計画(2021~2028) 

 

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