撮影日   2023.6.23

撮影場所  JR西日本宇野線 岡山駅

 

今回は先月岡山駅で撮影したJR四国が誇る3本の「アンパンマン列車」の

一つ、「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」を紹介します。

岡山駅から琴平駅又は高松駅間の運行ですが、中々の珍車です。

 

(一枚目)

虹と共にアンパンマンが描かれたキクハ32-502です。

気動車扱いですが運転台は設置されつつエンジンを持たない為制御車と

なっており、「キクハ」という珍しい記号を名乗っています。

 

キクハ32形は1997年と2003年に2両が製造された、16m級鋼製ボギー車で

トロッコ列車用として製造された為側面客室部分が開放構造となっています。

キハ185形等一般形気動車と併結される前提でブレーキは電磁自動空気

ブレーキ(CLE式)、連結器は自動連結器で台車は廃車発生品のコイルバネ式

TR51Cです。

足回りや車体寸法から国鉄時代に製造され予土線などで使用されている軽快

気動車ベースのキハ32形の一員として500番台となっていますが(但しキハ32

形は車体長16300mmに対しキクハ32形は15800mm)、実質的に別形式です。

 

キクハ32-501は1997年に予土線の「清流しまんと号」向けに導入され、

緑一色で導入され伴車のキハ185-20も緑帯(新製時の塗色)に塗られました。

後に徳島線の「藍よしのがわトロッコ」に転用されています。

この502は2003年の新潟鉄工製の増備車で、瀬戸大橋線でのトロッコ列車

用として導入されました。

こちらはキハ185-26と組んでいます。

(二枚目)

側面はトロッコ列車として開放構造ですが、501と違い開放部の

下半分はアクリル板が設置され、又眺望を一層考慮し腰部や床板の

一部にガラスを設置しています。

腰部のガラス部からもキャラクター達が覗いています。

運転台後部にはLED式の案内表示器?が見え、ドア上には謎の箱が

見えます。

 

当初501と同じ緑一色のデザインでしたが、2006年にリニューアルされ

「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」となり、塗色も変更されました。

定員も52名から48名となりました。

2015年に再リニューアルされ控車扱いのキハ185形はグリーン車と

なりましたが、こちらは普通車扱いのままです。

(三枚目)

車内は木製のBOXシートが並び、天井はグローブ付きの照明が

設置され、化粧板が貼られていない為むき出しとなっています。

 

この「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」は臨時列車扱いで、種別も

普通列車扱いとなっています。

キクハ32形の最高速度は95km/hと瀬戸大橋を走る列車では一番

足が遅くしかも唯一のコイルバネの車両ですが、瀬戸大橋を窓を

開けて走るのは気持ちよさそうです。

強風の日は怖そうですが。

(四枚目)

この車は片デッキ構造で、ドアは運転台後部に1か所設置

されています。乗務員室扉は有りません。

現在の塗色は白と水色をベースにキャラクターをあしらい、

虹をアクセントに加えています。

(五枚目)

運転台は半室式でシンプルな構造です。助士側や貫通扉部分は

開放されていてコキンちゃん?がいます。小さい頃と比べ知らない

キャラクターが多すぎます…。

貫通構造で幌受けも付いていますが、この車が中間に入る事が余り

無いかと思います。

尚東日本大震災後、復興応援の為東北・関東地方で機関車牽引で

使われた事が有ります。

(六枚目)

キロ185形側の妻面です。

こちらではアンパンマンとばいきんまんが待っています。

窓?の上部や座席の手すりにもキャラクター達が出迎えています。

「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」は2両編成ですが、座席は控車の

キロ185形だけの分が発売され、控車と同じ番号のトロッコ車の座席

を利用する形になっており、実質全車グリーン車です。

(七枚目)

続いて相方キロ185-26です。

キクハ32と似たコンセプトの塗装ですが、顔つきは大変精悍です。

キクハ32と違い製造時からスカート付きで、HMの「アンパンマン

トロッコ」の文字とアンパンマンが良い味を出しています。

 

種車となったキハ185系気動車は四国内の老朽した急行気動車の

置換え及び特急格上げの為、国鉄末期の1986年から88年にかけ

52両が製造された特急形気動車です。

前面は同期のキハ183形500番台風のスタイルで、車体は軽量

ステンレス車体を持ち側窓は連続窓風の固定窓です。普通列車の

運用も考慮し2ドアとなりドアは折戸です。

エンジンは直噴式で250PSのDMF13HSでキハ185形には2基搭載し、

台車は軽量の円錐積層ゴム式ボルスタレス式空気バネ台車のDT55

(付随台車はTR240)で、オーソドックスな液体式でブレーキは

CLE式です。

 

キハ181系と共に瀬戸大橋開業期の四国の特急列車の運用を支え

ましたが、2000系振り子式気動車や8000系電車導入で早期に

余剰が発生し、20両は九州に譲渡され残る車両も普通列車用への

格下げや観光列車に転用が進み、特急用は僅かとなっています。

(八枚目)

元は軽量ステンレス車体ですが、全面アンパンマンデザインの

ラッピングが施され、車内もアンパンマンの世界になっています。

ジャムおじさんがルーバーのせいでえらいことになっていますが…。

ドアはステップ付きです。

 

この車は元キハ185-26で1988年富士重工製です。民営化後の新製で

キハ185形ラストナンバーです。

2006年に「瀬戸大橋トロッコ」の控車に抜擢され、キハ185-20と

共にキハ185形導入当初の緑帯になりましたが、この2両は民営化後の

新造の為塗られた事は有りませんでした。

その後「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」仕様に改造され、2015年の

リニューアルに際しグリーン車に格上げされ、キロ185形となりました。

キハ185系気動車のオリジナルのグリーン車は中間の1エンジン車キロハ

186形だけだった為、先頭車では初のグリーン車です。

尚キロ185形0番台は当車だけですが、後に観光列車用に1000番台が

登場しています。

 

但しこの車の座席は種車の回転リクライニングシートでは無く、

トロッコ車に合わせBOXシートになっています。グリーン車マークと

ミスマッチです。

(九枚目)

21m級ステンレス車体で裾が絞られたキロ186形と、16m級鋼製車体で

ストレート車体のキクハ32との組合せはユニークです。

もっとも国鉄時代の気動車ではこの様な凸凹な編成は当たり前で、四国でも

キハ185形の普通用改造車とキハ32形の併結運用が有りました。

但し現在普通列車用キハ185形3100番台の運用は1往復しかない様なので、

今でも存在しているのか…。

 

行先表示器は「臨時」で、号車札と種別札はサボ式です。「指定席 禁煙車」

の文字も如何にも国鉄風で、この辺り近代的な車体を持ちながら国鉄の

名残が有ります。

(十枚目)

最後にキクハ32形の標記です。

上から「四カマ 定員 48 空車重量 23.9t」「27-3 多度津工」

所属区名札は「高」(高松)です。

転落防止幌は未設置で、車体は綺麗に保たれています。

おむすびまんが笠を上げていますが、君はパンでは無いよね?

(十一枚目)

こちらはステンレス車の地が見えるキロ185の標記です。

上から「形式 キロ185 自重 39.0t  換算 積 4.5 空 4.0」

「2023-3 多度津工」、所属区名札は「高」です。

何気にキクハ32と表記内容が異なります。

標識掛けも設置されています。

 

 

アンパンマンの世界観が楽しめるのもさることながら、瀬戸大橋を

トロッコ列車で走れるというのも大きなポイントだと思います。

そして普通列車扱いですがキハ185形が瀬戸大橋を走る機会も今や

この列車だけとなりました。

キクハ32といい、注目ポイントが実に多い列車です。

 

以上です。

 

参考文献   JR全車両ハンドブック 2004

 

参考HP   ウイキペディア 関連ページ