撮影日・撮影場所  各写真に記載

 

以前撮影した熊本市電の車両の紹介です。

今回は異端的な形式、8800型の紹介です。

 

(一枚目)

・水道町電停のA系統 健軍町行き8802号車です(2019.10.17)。

前面に「桂林」のヘッドマークが設置されています。

 

8800型は1988年に2両がアルナ工機で製造された、全金属製

2軸ボギー車です。この形式は前の8500型と大きく異なり、

車体は全長が少し長くなって13,700㎜となり、隣の鹿児島

市電2110~2140形の様な傾斜が付いたシャープなスタイルに

なりました。側窓も逆T字窓となり、当時の新型路線バスの

様なスタイルとなりました。

ドア配置も変更され、前後折戸となりました。これは1953年

製の170型以来の採用で、同形式が1970年に長崎電軌に移籍

して以来の採用です。しかし次の9200型では再び8200型と

同じ前中4枚折戸に戻りました。

車内はクロスシートが廃止され、オールロングシートに戻り

ましたが実際乗車するととにかく長いです。

側面方向幕は片側のドア脇(この写真では右手)腰部に設置され、

サボは設置されていません。

 

足回りも機器流用の8500型と違って新製され、8200型と同じ

VVVFインバーター制御で回生・発電ブレーキ付きとなりました。

但し試作要素の強かった8200型と違い、ある程度VVVF制御が

普及してきた時期の製造の為モーターは2基搭載(三菱MB-5016

-B、50kw)となり駆動装置はWN駆動、素子もGTOサイリスタを

使用したものとなりました。台車もインダイレクトマウント式の

コイルバネ台車でシェブロンゴム式軸箱支持方式の住友製FS-89で、

特殊な外観の8200型と違ってこの時期の一般的なスタイルです。

 

2両とも熊本市の友好都市の愛称が付いており、8801が「サンアン

トニオ」、8802が「桂林」の愛称が付いています。塗色も変更

され、緑色が濃くなり黄帯が入ったデザインになりましたが、

2両でデザインが一部異なり8801は黄帯が細く側面の帯も直線

では有りません。

(二枚目)

・上熊本車庫留置中の8802号車です(2021.7.25)。

隣は西鉄福岡市内線時代の塗色の5000型です。

 

製造以来、大きな変化も無く活躍していますがどうもドア配置上

使いにくいらしく、私が熊本にいた4年間でも大抵車庫で休んで

いました。乗車したのも1回程度で、下の101号の方が良く走って

いた記憶が有ります。

そのせいか広告ラッピングされた姿も見た事が無く、ラッピング車が

多い熊本市電では珍しく原色が拝めます(友好都市の愛称が付いて

いる為かも知れませんが)。

1枚目の運用中の写真も実は久々に見たものでした。

尚、8801はシングルアームパンタ化されていますが、8802は1枚目の

様に新型Zパンタのままです。

 

過去の写真を見ると冷房装置は交換されている様なのでまだ使われると

思いますが、いずれ前中ドア改造されたりしないでしょうか。

ドア配置が異端で製造後長くたってからドア配置を変更した例は嵐電

モボ500形(製造から32年後に前中ドア→前後ドアに変更)が有ります。

(三枚目)

・続いて、何故か同形式とされている8800型101号です。

(通町筋電停、2019.1.2)

 

この車両は1993年に1両がアルナ工機で製造されました。本車は

市電開業70周年及び当時開催予定の地方博覧会に合わせてイメージ

アップを図り、レトロ調デザインとなりました。

角ばった車体で屋根上機器もカバーされ二重屋根風となり、前照灯も

窓下1灯、前面には救助網が設置され側窓も2段窓?になりました。

塗色も茶色ベースで古風さを演出し、車内も木目調化粧板や袖仕切り、

床板を採用して丸形の照明や真鍮製パイプでレトロ且つ古風な感じを

演出しています。

当時はバスでも観光地向けにレトロ調の特別デザインバスが登場して

おり、当時の熊本市営バスでも大型車と小型車を採用しています。

小型車は熊本城周遊バス用でしたが、大型車は一般路線バスに入って

いたのが特筆されます。

車体長は少し短く13,500㎜で、当時製造の9200型と同じです。

 

足回りに関しては新製で、当時最新の9200型と同じです。既に1992年

から8800型のデザインを一部変更し、前中ドアにした9200型が製造

されていましたが本車は何故か8800型として製造されました。

特殊車両という事で同型とされたのでしょうか。

尚台車は防音車輪となった為FS-89Bとなり、これは9200型9205号にも

引継がれました。

(四枚目)

この時は正月だった為装飾されていました。

年末年始には装飾され、電飾もきらびやかに「イルミネーション

電車」として走ります。貸切時には優先的に配車されるそうです。

 

尚現在101号はIGBT素子使用のインバーター制御装置に更新されて

います。

(五枚目)

こちらは装飾されていない姿の101号です

(通町筋電停付近、2021.4.6)

上と同じA系統 熊本駅前・田崎橋行きでした。

 

レトロな見た目に関わらず新しい走行音を奏でます。他の

レトロ調電車では都電9000形がやはり足回り新製です。

一方嵐電モボ21形や鹿児島市電100形(2代目)は機器流用と

なっています。特に隣の鹿児島市電100形は既に超低床車が

導入されていた中2012年にもなって登場した機器流用車です。

 

尚熊本市電で101は3代目で、初代と2代目は散水車と資材運搬

車だったとの事です

(六枚目)

この車両は側面窓下方向幕も使われていますが、側面サボも

使用されています。8500型の様にフルカラーLED化される事は

有るのでしょうか?

パンタグラフは新型Zパンタです。

 

熊本市電では異端的な、全く異なる姿を持つ8800型ですが

これからも長く頑張って欲しいです。

 

 

以上です。

 

参考文献  鉄道ピクトリアルNo.688 2000.7 臨時増刊号

      【特集】路面電車~LRT

 

参考HP   ウイキペディア 関連ページ