撮影日 2019.3.23(4~6枚目は3.24撮影)
撮影場所 あいの風とやま鉄道あいの風とやま鉄道線 富山駅
(4~6枚目は富山地方鉄道電車内から撮影)
今回は昨年の北陸訪問時に撮影したあいの風とやま鉄道413系について紹介します。
同形式の七尾線所属車については以前紹介したので(2019.11.30記事)、そちらも
参照下さい。
413系は国鉄時代末期に誕生した近郊型電車です。国鉄時代末期には地方線区のフリークエンシーサービス提供と多数存在していた客車列車置き換えの為、急行列車廃止により余剰となった急行型電車が多数普通列車に転用されていました。しかしこれらはデッキ付き片開き扉でクロスシート主体の為ラッシュ時の輸送に適さず、又車両によっては経年の為老朽化が進んでいました。
この為交直流急行型電車の足回りを流用し通勤輸送に対応した車体に乗せ換えて誕生したのが交直流用の413系と交流専用の717系です。
両形式とも以前に地方線区向けに導入されていた2ドア両開き・ステップ付きの近郊型電車417系・713系と同じ車体で、前面は401・421系から長く続いた国鉄近郊型電車標準の「東海形」スタイルです。側面も標準的なユニット式の2段窓で、同時期に既にステンレス車体・ボルスタレス台車の211系が製造されていましたが一時代前のスタイルの鋼製車体となりました。
室内はセミクロスシートで流用品を使用しています。
足回りは種車の物を再用し、一般的な抵抗制御となっていますが種車が抑速ブレーキ非装備(413系→471・473系、717系→451・453系 制御車は何れもクハ451・サハ451形)の為更新後も非装備となっています。
台車は種車の空気バネ台車DT32・TR69系を装備しましたが、モーターについては多くの車両が元々100KWのMT46でしたが最終的に全車120KWのMT54に統一されています。
冷房も種車を流用しモハ412形が集中式のAU72系、その他が分散式のAU13系を装備しています。
413系については1986年から国鉄松任工場で改造が行われ、3両編成11本分が登場しました。但しその内制御車2両分については経年の新しいサハ455形を運転台設置及び近郊型化改造のみで転用したクハ455形700番台を組み込んだ為、改造数は31両となっています。
その為クハ412形は4と11が欠番になっています。又電動車の改造種車はほぼ471系でしたが1ユニットのみ473系(1ユニットしか製造されていなかった)改造で、こちらは100番台となっています。
同期の717系は新形式への置き換えにより東日本車は2008年、九州車は2014年に引退しましたが、413系は現在でも現役です。
北陸新幹線開業に伴い2015年に5本があいの風とやま鉄道に譲渡され、西日本に残存した車両も北陸本線運用から七尾線運用へシフトされた為塗色は茜色になっています。
尚譲渡前の2014年からクハ455形を含まない7編成分について台車更新(WDT32/WTR69)や転落防止幌の設置、車内ドア周りや座席手すりを黄色く塗装した体質改善工事が実施されています。今後の使用年数を考慮したのかJR西日本の他形式の体質改善工事に比べメニューが簡素化されています。
現在はJR西日本所属車が七尾線用でB4~6、8、9、11編成の6本(内8・9編成は体質改善済み、4・11編成はクハ455形組み込みで11編成の電動車は100番台)、あいの風とやま鉄道所属車が5本で全車体質改善済みとなっています。
今後七尾線用は521系1000番台への代替が決まっており、あい鉄所属車も521系新製車に代替予定です。
今では上信700形(元107系)と並び貴重な国鉄急行型電車の名残を残す貴重な形式ですが、活躍できる時間も後僅かとなっています。
(一枚目)
・新鋭521系と並ぶAM04編成の金沢方先頭車クハ412-7です。
落成は1987.3.31との事で、国鉄民営化前日の落成となっています。
413系ではこの編成とAM2編成のクハ412-2が同日落成で国鉄最終日の落成です。
前述のように既に211系の時代ですがコスト面や国鉄工場での製造の為伝統的な「東海形」スタイルとなっています。警笛シャッターはオワン型となっています。
前面行先表示器は塞がれた形状ですが北陸トンネル通過対策で登場時からこの形です。
このスペースが活かされる事なく引退を迎えそうです・・・。
(二枚目)
・こちらは直江津方先頭車クモハ413-7です。
塗色はあい鉄所属車はイベント改造車を除き青一色になっています。
これはJR西日本が2010年代前半に行った単色化の為で、北陸本線用の車両は413系と
457・475系の一部がこの塗色に変更されました。
しかし何と似合わない事か・・・。以前の白に青帯の北陸色や登場時の小豆色に白帯の方が
どれだけ良い事か・・・。中国地方の「末期色」に劣らず「真っ青」です。
(三枚目)
・中間電動車モハ412-7です。
キハ47風の両開き2ドアですが窓配置が異なっています。417系発祥のこのスタイルの形式は少なく現存するのは他に九州の713系のみです。
国鉄末期の製造ですがドアや戸袋窓は黒Hゴム支持となっています。国鉄末期の形式は
115系3000番台の様に固定窓の支持方法がHゴム不使用となっている形式も有り、この違いは良く分かりません。
ドアは半自動式です。写真で少し開いているのは停車中に半自動ドア扱いになっている為です。未だに押しボタンは無く取っ手での開閉ですが、今時国鉄・JR型の電車で手動式の半自動ドアのままなのは新潟に残る115系くらいでしょうか。
ドア横の手すりが黄色になっているのが見えますが、これは体質改善工事によるものです。
(四枚目)
・同じ編成を翌日あい鉄線と並走する富山地鉄本線の電車内から撮影しました。
滑川~黒部間は地鉄と並走しており、この様な光景が見られます。
余談ですが地鉄の10030形の内一部と16010形は台車がJRから購入したDT32/TR69系となっており、モーターもMT54を装備しています。よって別会社で違う車体ながら同じ系列の台車・モーターを装備した車両が隣の線路を走っている事になります。
残念ながら今回地鉄で乗車していたのは違う足回りの14760形でしたが・・・。
尚積雪地の為主電動機への空気取り入れ用に雪切室を設置しており、運転台後ろにその
ルーバーが見えます。
(五枚目)
・朝日を帯びたクモハ413-7の側面です。
今や貴重な国鉄型の分散クーラーAU13Eが見えます。現役で日常的に乗れるのは上信700形程度になってしまいました。阪神電車にはまだ同型クーラーが多数残っていますが。
屋根上の通風器は全部撤去されました。JR九州に続き西日本も通風器の撤去が進められ
本形式も対象となっています。個人的にはすっきりしてこちらの方が好きです。
車番の書体は国鉄時代のフォントのままです。JR西日本の体質改善工事施工車はフォントが改められる例が殆どですがこの形式は例外でした。
車内モケットは茶色です。
よく見ると座席の手すりが半月型です。これは国鉄近郊型電車でも初期の車両で見られた
形状で、この座席が発生品である事を物語っています。体質改善で黄色くなっています。
(六枚目)
・ここは黒部駅だったと思います。
停車直前の為ゆっくり撮影できました。
地鉄電車とのデッドヒートも見てみたいです。
(七枚目)
・「とやま絵巻」塗色のAM03編成クハ412-3です。
あい鉄では2本がイベント用に改造されており、まずは2016年に塗色変更とトイレの洋式化、座席モケット変更等行った「とやま絵巻」が落成しました。2019年には車内で食事が出来るようにAM01編成を改造した「一万三千尺物語」も登場していますが、撮影時は落成前でした。
413系は今後521系への取り替え予定ですが、これらの編成はどうなるのでしょうか。
「一万三千尺物語」は残りそうですが、この車両は・・・?
(八枚目)
・ぶれていますが・・・クモハ413-3です。
車体塗色は富山県各地域の風物に因んだデザインになっているそうですが、黒基調というのはJR九州の「はやとの風」でもそうですがインパクトが大きいです。「一万三千尺物語」よりもインパクトがある気が。
前面にはヘッドマークが付いていますが、413系のヘッドマークといえば90年代に北陸本線の電車につけられていた「タウントレイン」を思い出します。
(九枚目)
・モハ412-3です。
どうしてもスペース上上手く全体が撮影できませんでした。
元々重厚感のある車体が塗色のせいで更に重厚になっています。「真っ青」よりこちらの方がまだ良いです。
体質改善工事で転落防止幌が設置されました。
(十枚目)
・室内写真です。確かモハ412形だったと思います。
モケットは車両によって異なっており、この車両は緑です。
イベント改造されたとは言え目に付くのはモケット変更程度です。
手すりやつり革は体質改善工事で黄色くなっていますが、クリーム系の化粧板や茶色の床は元のままです。ボックスシートの背面には灰皿跡のビスまで残っています。
屋根は種車の分散式クーラーに合わせ丸屋根となっており、クーラーユニットが個別で露出
しています。照明は蛍光灯のままです。
荷棚はパイプ式ですが、近郊型標準の金網式ではないのでこれも流用品かも知れません。
置換が迫る413系。乗車は叶いませんでしたが国鉄型王国だった北陸の名残の形式なだけに引退まで無事に走って欲しいです。
以上です。
参考HP あいの風とやま鉄道公式HP
ウイキペディア あいの風とやま鉄道関連ページ