沖正人オフィシャルブログ「沖正人の新世界胃散」Powered by Ameba
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>

flavor that works for me the best 3

ホウレンソウ(菠薐草、学名:Spinacia oleracea)は、アカザ科
野菜
雌雄異株
ほうれん草とも表記される。高温下では生殖生長に傾きやすくなるため、冷涼な地域もしくは冷涼な季節に栽培されることが多い。冷え込むと軟らかくなり、味がよりよくなる。




・・・確かポパイってホウレン草が好きだったよな




ガキの頃、、ポパイの様にホウレン草の入った缶をガバっと開けて豪快に食べて強くなる!と言うのに憧れて、それを真似したくて仕方が無かったのだが、実際、我が家のご飯で出て来る時のホウレン草って、ほぼ間違いなく小皿にチョコッと盛られた上品な感じの胡麻和えで出てくるので、全然ガバっと行けずに、全くポパイ感を感じられなかったな~




目の前に出て来た、頼んだ筈の無いホウレン草ラーメンを見つめながら、ふと、そんな事を思った




いやいや、そんな呑気な事を考えている場合ではない




僕は薬味ネギラーメンを頼んだのだ!!




丁度その時、関根さんはカウンターの中から、僕と離れて座る二人組に、僕に続きラーメンを提供している最中で、どうやら向こうには注文通り、味付き玉子ラーメンとチャーシューメ麺を作った様なのだが、一言聞こえたのは『あっ!!チャーシューメンは僕の方です』という二人組のどちらかの声だった




このオヤジ、結局パーフェクトで間違えてるではないか!!




三人分のラーメンを出し終えた途端、さっきまでの不安に満ちた表情が少し緩み、見様によっては一仕事終えた満足感すら漂う表情の関根さんに何だかイラッとしてしまい、気が付いたら僕は既に声に出してしまっていた




『すみません!!僕が頼んだのは薬味ネギラーメンなんですけど!!』




・・・・・ホゲッ???




その時の関根さんの表情を敢えて音で表すならば、きっとこんな音だったと思う




関根さんが僕をまるで宇宙人を見る様な眼で見ている




何だその表情は!!




まるで僕が




『すみません!!僕が頼んだのはオムライスなんですけど』




とでも言ったみたいではないか!!




僕が頼んだのは薬味ネギラーメンであって、そしてこの短時間に三度も薬味ネギラーメンと言った筈




どうしたらそんなに不思議な表情が出来るのだ!!




きっと、僕の表情には不快感がアリアリと出ていたのだと思う




それに気付いた関根さん、ようやく事の重大さに気付き




『あっ!!すみません!!直ぐに作り直します!!』




と、今さっき僕に提供したラーメンを、今直ぐに取り上げんばかりの勢いで手を出してきた




『いや!!時間無いんで、作り直さなくていいです!!』




僕は関根さんの提案を拒否した




『では、薬味ネギを別皿で御出しします、ホーレン草はサービスで!!』




・・・危うく、有り難うございます♪と言いかけたではないか!!




別にホーレンソウは外して貰っても全然構いませんけど!!と言いたい所だったが、それも何だか大人気無い気がしたので、ここは素直に関根さんの提案に乗った




そして間もなくして、薬味ネギラーメンの盛られた小皿が届いた




ここまで来たら、その小皿にもう一回、ホーレン草を盛って出してくる位のボケを期待したが、この人は喜久三ではなく、一般人の関根さんなのだ、僕も関根さんのそのボケに対するご褒美の座布団を用意している訳ではない




大人しく食べて、さっさと出よう・・・そう思っていた、その時だった




!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




関根さんの作ったラーメンを一口食べて・・・・・頭の中に今日二度目のパニックが起こった




しかも今回は先程のプチパニックではなく、大パニックが!!




味が・・・無い!!




いや、正確に言うと、味が殆ど無い!!・・・・




ここのラーメン、前にも書いたが、味をカスタマイズ出来るのである




だからと言って、これは仮に味を強烈に薄めで!!と、リクエストしたとしても、絶対にあり得ない味




もしかして、僕には味覚が無くなったのか!!




不安になり、慌てて僕から離れて座る二人組を見た!!、すると、どうやら僕と同じパニックに陥ってるらしく




二人共、ラーメンの味にビックリしすぎて顔がハニワの様になって固まっていた・・・・




結果として




関根さんの作ったラーメンは




見た目は普通なのだが




まるで、一リットルのお湯の中に塩を一振りしただけの様な




確実に何かを入れ忘れていると思われる

減量中のボクサーもビックリの超ヘルシーラーメンに仕上がっていた




食った瞬間




何じゃコリャー!!







松田優作の殉職シーンよりも気持ちの入った同じ台詞を、今なら言えそうな気がした




それ位に驚いた




人はビックリしすぎると逆にリアクションが出来なくなると言うのは本当である




僕はしばらく茫然としていた




それと共に、何だか泣きたくなってきた




何時もの、癖になるパンチの効いたラーメンを期待していたのに




出てきたのはパンチの無いお湯




まるで




気合い入れて武道館まで永ちゃんのコンサートに行ったのに




何故か出てきたのは




ナオト・インティライミ




みたいな




何だこの脱力感は・・・・・




そんな感じで




しばらく打ちひしがれていると




二階から階段で誰か降りて来る音が聞こえた




見ると




店の大将と美人な奥さんの二人だった




おったんかい!!




僕は




世界の中心で愛は叫びたくはないけど




今は




店の中心で大将には叫びたかった




でも、ここで、今この事実を伝えて、もう一度作り直して貰っている時間は僕には無かった




あと




それによって、新人の関根さんが大将に怒られてる姿を見ながらラーメンを食べるのも嫌だったし、美人奥さんの曇った表情を見るのも何だか辛かった




なので




僕はラーメンに胡椒を大量に入れて




咳き込みながら一気に流し込んだ




もし、この時、関根さんに




『お客さん、急いで食べて、そんなに美味しいですか♪』




などと話し掛けられていたら




間違いなく僕は、このオヤジにドンブリをブン投げていたと思う




結局、胡椒程度では大して味も無いので




このスーパーヘルシーラーメンを完食する事もなく




結果




僕の食欲は満たされる事は無かった




お会計の時に




最後に関根さんに何か言ってやろうかとも考えたが




お会計をした相手が関根さんではなく、美人奥さんだったので




結局いつも通りに店を出た




店を出て、複雑な気分を抱えながら




商店街を駅の方へ向かって歩いた




そして気が付くと




今度は関根さんに、味メチャメチャ濃いめで!!と言ってやろう!!







こんな目に遭わされながら、また行く気でいる自分にビックリした








次回 『返り討ち』 に  つづく

flavor that works for me the best 2

その日の僕は若干の二日酔いだった




時間は午前11時




朝食にはかなり遅いが昼食には少し早い時間




この時間は商店街の他の飲食店は準備中の札を掲げてせっせと開店の準備をしている中、このラーメン屋だけは『ウチは既に受け入れ態勢は整ってますよ!』と言わんばかりに、店の看板に、とても趣味がイイとは言えない電球を無数にチカチカと光らせながら既に営業を始めていた




その日の僕は午後に結構な感じで予定が入っていた為、あまり時間が無かったのと、まだ酒が完全に抜けきっていなかったので、ちゃんとしたご飯ではなく、何となく汁っぽい物をササッと食べて出ようと思って店に入った




『いらっしゃい』




店からの第一声、何だか聞き慣れない声がして変な違和感を感じた




見ると店のカウンターの中には、いつも其処に居るはずの、無骨なラーメン屋の大将と美人奥さんの姿は無く、代わりに見知らぬオヤジ、関根さん(仮名)が不安そうに僕を観ながら立っていた




『あっ!!喜久三が居る!!』




関根さんを最初に見た時、僕は驚き思わず独り言を言ってしまった




それ位に関根さん、笑点に出てる人にソックリなのだ!!




じゃあ名前も関根さんではなく喜久三でいいじゃないかと思うかもしれないが、確か本物の喜久三も自分で喜久三ラーメンっていうのを出して商売をやってるというのを以前テレビで観たので、まあそっちとは関係ないと言う事で関根さんなのである




でも関根さん、ホントに喜久三にソックリ過ぎて、もしかしたらこの店は、内装は今までと一緒だけど、実は今日から喜久三ラーメンに変わったのではないかと不安になり、一回店の外に出て看板を再確認しようか真剣に悩んだ程だ




そんな喜久三、いや、関根さん、店のカウンターの中から不安そうな眼をして僕をずっと見ている




その時、他に客は居なかった




店中はカウンターだけで、そこに椅子が十席程しかない細長いウナギの寝床の様な造り




多分僕が今日最初の客なのであろう




ならば折角なのでと、店のカウンターの真ん中辺りに腰を下ろした




『あれ!今日は大将は?』




店の常連とは言っても、こんな話をするほどこの店と親しくはないので勿論そんな事は何も聞かない




とりあえず急いでカウンターに置いてあるメニューを見る




そしてここが喜久三ラーメンではなく、僕が今まで通っていたラーメン屋である事を確認して、ちょっとホッとする




それと同時に今度は色んな事を考える




じゃあ、このオヤジは何者だ?




しかも何故一人なのだ?




もしかしたらホントはこの人がオーナーか?




本物の喜久三とは本当に何も無いのか?




そんな事を考えていると、僕の後に二人の客が入って来た




『いらっしゃいませ!!』




関根さん、僕の時とは何だか調子の違う感じの大きい声で客に言うのだが、ますます様子がおかしい




何だろう、この人さっきからエラく落ち着きがないのだ




何だ?トイレでも行きたいのか?




さっきから関根さん、じっと立ってられない変な感じなのである




と、その前に




この店の特色の補足をしよう




実はこの店




味を自分の好みにカスタマイズ出来る




とは言ってもベースになるスープは同じで




好きに選べるのは




麺の太さ(通常は太麺)、味の濃さ、油の多さの三点




例えば僕は毎回、決まって薬味ネギラーメンを頼むのだが




薬味ネギラーメン!!と普通に頼む時もあれば




薬味ネギラーメン、細麺の油少なめ




とか




薬味ネギラーメン、濃いめの油多め




という風な頼み方になる




良く言えば客好みに




悪く言えばポリシーのない




何だか最近こういう店って増えた様な気がする




いいから黙って食え!!




本当は僕はそういう店の方が好きだったりするのだが




このラーメン屋では自分の好きに味を調整出来るのである




そして僕は、薬味ネギラーメンを頼んだ




今日は特にややこしい注文はしていない




続けて後から入って来た二人組も、何かしら注文したのは聞こえたが、その時は何を頼んだのかまでは知らなかった




そして三人分の注文を受けた関根さん、何だか不安そうな顔で




 はい!・・・はい!・・・はい!







どうにか客の注文を頭で整理したらしく、お湯が煮えたぎる釜の中に三人分と思われる麺をほぐして入れた




それを見届けた僕は、注文したラーメンが出来上がるまでの合間、携帯に届いていた未確認メールを開いて見ていた




その間、時間にすると三十秒




カウンターで下を向いて携帯を見ている僕に、いきなり正面から影が覆い被さって来たような気がした




そして何だか慌てた感じで




『すみません』




その声に気付き、顔を上げるとカウンターの向こうには関根さんが立っていた




あれ?・・・・貴方、確かさっきラーメンを作り始めた筈では?、ツイッターで言う所の『今ラーメン作ってるなう♪』な筈では?




予想外の状況に正直ちょっと戸惑った




確か今、絶賛料理中の筈の関根さんが、今本当は持ってなきゃイケナイ筈の長箸や湯切りの網を持たず、代わりに小さなメモ用紙とペンを持って、まるで難事件に遭遇した聞き込み刑事の様な険しい顔をして、立て続けに僕に聞き込んだ




『すみません!!注文何でしたっけ?』






・・・・・えっ?・・・・薬味ネギラーメンですけど・・・・




そんな難しい物は頼んでいない筈なんだけど




口には出さなかったがそう思った




そして、その関根さんの聞き込み調査は、僕だけではなく後の二人の客にも行われた




えっ?・・・味付け玉子ラーメンだけど。・・・・僕はチャーシューメン・・・




カウンターで僕と少し離れて座る二人組の客の何だか不快そうな声もハッキリと聞こえて来た




そりゃそうだ




この店の特色である、味をカスタマイズするという事を、今ここに居る僕を含めた三人の客は誰もしていない、何もややこしい注文はしていないのだ




僕も、この関根さんの大掛かりな聞き込み調査のお陰で、何の関係も無い二人組のオーダーまで把握してしまったではないか




そして関根さん、その後、再びラーメンを作り始めたのだが、何だか不安に思い、しばらく観察して見ていると、どうやら調理場の何処に何が有るのか、あまり把握していないらしく、ラーメンを作っている間中、常に何かを探しているように見えた




そして数分後




カウンターの向こうの関根さんから僕の元にラーメンが届いた




離れて座る二人組の客よりも少しだけ先に




なるほど、今日僕が一番最初に来た客だと言う事での、ささやかな配慮なのかな




何だ何だ、僕の抱いていた関根さんに対する不安は、もしかしたら少し余計な物だったのか♪







思えたのは一瞬だった




僕の元に届いたラーメンを見て、あまりに驚き力が抜けてしまい、握っていた箸を落としそうになった




一瞬、何が起こったのか分からないプチパニックに陥った




なんと




僕の前に出てきたのは薬味ラーメンではなく




かといって、離れて座る二人組の客の頼んだ、味付け玉子ラーメンでもチャーシューメンでもなく




まさかまさかの




ホウレン草ラーメンだった




このオヤジ、完全に混乱しとる!!








次回  サブタイトル  『味覚障害』へと        つづく  

flavor that works for me the best 1

今からちょうど一年ほど前に、ウチの近所にラーメン屋が出来た




僕の暮らす街は都内では何処に行くにも割と便利な場所にある




よく初対面の人に『何処に住んでるの?』と聞かれて答えると、大体は『いい所に住んでるね~、家賃とか高いでしょ~』とか言われるのだが




たまにテレビや雑誌などで見かける『東京住みたい街ランキング』等という類のアンケートの上位には全く食い込んでこないという




何というか、周りの人間からすると




便利なんだろうけど住もうとは思わない街、らしい




それでもやはり、住めば都であり




交通の便は確かに良く




そして実は周りが思ってるほど家賃も高くなく




そんなこんなでもう十年以上、この街で暮らしている




そして僕の家は




最寄りの駅から少しだけ離れていて




そうなると周りは住宅街で




なので、ご飯を食べる時は、最寄りの駅の方にまで出て行くのが普通だったのだが




その僕の家と、最寄りの駅との真ん中




いや




真ん中より、若干ウチ寄りにそのラーメン屋は現れた




そこのラーメン




味は・・・至って普通




いや、普通と言っても単に普通に美味いのだが、例えば出来たばかりのラーメンを写真に撮って自分のブログにアップしたり、フェイスブックで紹介したり、ツイッター等で、今ラーメン屋なう♪、等と騒ぎ立てる程の物では決して無い




だが、何だかたま~に無性に食べたくなる癖のある味




僕にとってのジャンクフードと言う言葉は、この店のラーメンの事だと考えればシックリとくる




そして今から、この店の素敵な特色を箇条書きにする




・朝の11時から深夜遅くまで、盆だろうが正月だろうが何時でも開いている




・値段が安く量が多い ラーメン500円 餃子190円 半ライス50円 




・半ライスに関しては店のオヤジのサジ加減なのでたまに普通のライスより多い時がある




・常連になると普通に頼んだラーメンがノリラーメンで出て来る




最後に、これは店の特色というか、この街の七不思議の一つでもあるのだが




店の大将の奥さんらしき人が信じられない程に美人




いや、これは別に僕のタイプとかでは決してないのだが、例えばパソコンで美人と検索するとこの人が出て来るのではと思わせる程の、所謂一つの典型的な美人




『確かにイイ人ではあるが、なぜこんな無骨な感じの店の大将とこの奥さんが?????』




僕だけではなく店の常連は皆が皆、何時も心の中に多くの?を残しながらお勘定を済ませ店を出て行くのがこの店の恒例となっている




そんな、近所のラーメン屋




何だかんだと繁盛していて




なので昼間の忙しい時間帯は、この美女と野獣夫婦だけでは手が足りないという判断を下したらしく




最近、新しいバイトを雇った




そのアルバイト




若いフリーターでもなければ近所の大学に通う学生でもない




年の頃50代後半の中年のオジサン




そしてその働きっぷりを見るに、どうやらこのオジサン、ラーメン屋はおろか、飲食店の経験もまるでない感じの完全な素人さんアルバイター




そのオジサン




名前は分からないのだが、それではこの先、物語が進まないので、ここは敢えて僕の独断でこのブログの中では




関根さんと呼ぶ事にする




この物語は店の常連の僕と新人アルバイター関根さんの、二週間越しでカウンター越しの熱い物語である                                  




                                                         つづく

1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 最初次のページへ >>