flavor that works for me the best 3
ホウレンソウ(菠薐草、学名:Spinacia oleracea)は、アカザ科
の野菜
。雌雄異株
。ほうれん草とも表記される。高温下では生殖生長に傾きやすくなるため、冷涼な地域もしくは冷涼な季節に栽培されることが多い。冷え込むと軟らかくなり、味がよりよくなる。
・・・確かポパイってホウレン草が好きだったよな
ガキの頃、、ポパイの様にホウレン草の入った缶をガバっと開けて豪快に食べて強くなる!と言うのに憧れて、それを真似したくて仕方が無かったのだが、実際、我が家のご飯で出て来る時のホウレン草って、ほぼ間違いなく小皿にチョコッと盛られた上品な感じの胡麻和えで出てくるので、全然ガバっと行けずに、全くポパイ感を感じられなかったな~
目の前に出て来た、頼んだ筈の無いホウレン草ラーメンを見つめながら、ふと、そんな事を思った
いやいや、そんな呑気な事を考えている場合ではない
僕は薬味ネギラーメンを頼んだのだ!!
丁度その時、関根さんはカウンターの中から、僕と離れて座る二人組に、僕に続きラーメンを提供している最中で、どうやら向こうには注文通り、味付き玉子ラーメンとチャーシューメ麺を作った様なのだが、一言聞こえたのは『あっ!!チャーシューメンは僕の方です』という二人組のどちらかの声だった
このオヤジ、結局パーフェクトで間違えてるではないか!!
三人分のラーメンを出し終えた途端、さっきまでの不安に満ちた表情が少し緩み、見様によっては一仕事終えた満足感すら漂う表情の関根さんに何だかイラッとしてしまい、気が付いたら僕は既に声に出してしまっていた
『すみません!!僕が頼んだのは薬味ネギラーメンなんですけど!!』
・・・・・ホゲッ???
その時の関根さんの表情を敢えて音で表すならば、きっとこんな音だったと思う
関根さんが僕をまるで宇宙人を見る様な眼で見ている
何だその表情は!!
まるで僕が
『すみません!!僕が頼んだのはオムライスなんですけど』
とでも言ったみたいではないか!!
僕が頼んだのは薬味ネギラーメンであって、そしてこの短時間に三度も薬味ネギラーメンと言った筈
どうしたらそんなに不思議な表情が出来るのだ!!
きっと、僕の表情には不快感がアリアリと出ていたのだと思う
それに気付いた関根さん、ようやく事の重大さに気付き
『あっ!!すみません!!直ぐに作り直します!!』
と、今さっき僕に提供したラーメンを、今直ぐに取り上げんばかりの勢いで手を出してきた
『いや!!時間無いんで、作り直さなくていいです!!』
僕は関根さんの提案を拒否した
『では、薬味ネギを別皿で御出しします、ホーレン草はサービスで!!』
・・・危うく、有り難うございます♪と言いかけたではないか!!
別にホーレンソウは外して貰っても全然構いませんけど!!と言いたい所だったが、それも何だか大人気無い気がしたので、ここは素直に関根さんの提案に乗った
そして間もなくして、薬味ネギラーメンの盛られた小皿が届いた
ここまで来たら、その小皿にもう一回、ホーレン草を盛って出してくる位のボケを期待したが、この人は喜久三ではなく、一般人の関根さんなのだ、僕も関根さんのそのボケに対するご褒美の座布団を用意している訳ではない
大人しく食べて、さっさと出よう・・・そう思っていた、その時だった
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
関根さんの作ったラーメンを一口食べて・・・・・頭の中に今日二度目のパニックが起こった
しかも今回は先程のプチパニックではなく、大パニックが!!
味が・・・無い!!
いや、正確に言うと、味が殆ど無い!!・・・・
ここのラーメン、前にも書いたが、味をカスタマイズ出来るのである
だからと言って、これは仮に味を強烈に薄めで!!と、リクエストしたとしても、絶対にあり得ない味
もしかして、僕には味覚が無くなったのか!!
不安になり、慌てて僕から離れて座る二人組を見た!!、すると、どうやら僕と同じパニックに陥ってるらしく
二人共、ラーメンの味にビックリしすぎて顔がハニワの様になって固まっていた・・・・
結果として
関根さんの作ったラーメンは
見た目は普通なのだが
まるで、一リットルのお湯の中に塩を一振りしただけの様な
確実に何かを入れ忘れていると思われる
減量中のボクサーもビックリの超ヘルシーラーメンに仕上がっていた
食った瞬間
何じゃコリャー!!
と
松田優作の殉職シーンよりも気持ちの入った同じ台詞を、今なら言えそうな気がした
それ位に驚いた
人はビックリしすぎると逆にリアクションが出来なくなると言うのは本当である
僕はしばらく茫然としていた
それと共に、何だか泣きたくなってきた
何時もの、癖になるパンチの効いたラーメンを期待していたのに
出てきたのはパンチの無いお湯
まるで
気合い入れて武道館まで永ちゃんのコンサートに行ったのに
何故か出てきたのは
ナオト・インティライミ
みたいな
何だこの脱力感は・・・・・
そんな感じで
しばらく打ちひしがれていると
二階から階段で誰か降りて来る音が聞こえた
見ると
店の大将と美人な奥さんの二人だった
おったんかい!!
僕は
世界の中心で愛は叫びたくはないけど
今は
店の中心で大将には叫びたかった
でも、ここで、今この事実を伝えて、もう一度作り直して貰っている時間は僕には無かった
あと
それによって、新人の関根さんが大将に怒られてる姿を見ながらラーメンを食べるのも嫌だったし、美人奥さんの曇った表情を見るのも何だか辛かった
なので
僕はラーメンに胡椒を大量に入れて
咳き込みながら一気に流し込んだ
もし、この時、関根さんに
『お客さん、急いで食べて、そんなに美味しいですか♪』
などと話し掛けられていたら
間違いなく僕は、このオヤジにドンブリをブン投げていたと思う
結局、胡椒程度では大して味も無いので
このスーパーヘルシーラーメンを完食する事もなく
結果
僕の食欲は満たされる事は無かった
お会計の時に
最後に関根さんに何か言ってやろうかとも考えたが
お会計をした相手が関根さんではなく、美人奥さんだったので
結局いつも通りに店を出た
店を出て、複雑な気分を抱えながら
商店街を駅の方へ向かって歩いた
そして気が付くと
今度は関根さんに、味メチャメチャ濃いめで!!と言ってやろう!!
と
こんな目に遭わされながら、また行く気でいる自分にビックリした
次回 『返り討ち』 に つづく