「ぶうわあぁ」
カイゾーは、何か巨大なものにおしつぶされそうな悪夢を見て、目覚めた。
汗をかき、息を乱している自分を自覚して、落ち着きを取り戻す。
ふと、体に鈍い重みのようなものを感じる。
目を向けると、ヤマモトが乗っかって、呑気にいびきを立てている。
少し冷気を感じるが、気持ちのいい朝だ。
リョーはスヤスヤと寝息を立てている。
カイゾー「おーい、起きろよー」
とヤマモトを突き飛ばした。
突き飛ばされたヤマモトは、ひっくり返ったまま、いびきをかいている。
カイゾーの声でリョーが起きだした。
この世のものとは思われない寝起きの顔で「おはよう」とリョーは声をかける。
「うわあっ」
ヤマモトが突然大声を出し、目覚めた。
その声に驚いた二人は、ヤマモトのことを凝視する。
ヤマモトは大きな目をギョロつかせ、ここがどこかを確認しているようだ。
リョー「どうしたの?変な夢でも見たの?」
ヤマモトは大げさに何度もうなずく。
カイゾー「どんな夢?」
ヤマモト「…なんか、どこか分からない暗闇の中を彷徨っていて、二チャチャチャチャって声がずっと追いかけてきてさ…」
リョーとカイゾーは、固唾を飲み、ケピエルの酒場で見た1度見たら忘れにくい顔を思い出していた。
ヤマモト「そしたら、急に目の前にあいつが現れて、髪の毛が短くなってたんよっ」
リョーとカイゾーは全く共感できない説明をうけ、あっけにとられた。
鳥のさえずりの中、川のせせらぎが聞こえる。
近くに川が流れていることに気づき、3人はそこで小汚い顔を洗った。
さっぱりした3人は、軽い朝食をすませ、身なりを整え、出発した。
3人とは対照的にとても爽やかな朝である。
リョー「これがピクニックなら最高だよな~」
昨日の疲れなど微塵も感じさせず、軽やかに歩いていく。
カイゾー「ほんと、魔王とかいる感じしないよね」
ロン毛が風になびき、周りを不快にさせながら、歩いていく。
ヤマモト「いや、いるよ、夢にも出てきたし」
夢に引っ張られ、魔王と友達を勘違いし、低めの重心で、歩いていく。
街が近づいてきた。
もう、10分も歩けば到着しそうだ。
大きな城を中心とした城下町のようだ。
リョー「いや~、でも、全くモンスターとか出る気配ないちょね~」
カイゾー「噛んでるよ」
と、その刹那っ
スライムとゴブリンがあらわれた!
リョー「うわしゅっ」
カイゾー「ぶうわぁ」
ヤマモト「うおっ」
3者3様の驚き(リョーは噛んだ)を見せ、身構える。
リョー「なんかスライムはかわいいね」
カイゾー「ゴブリンはキモいわ」
ヤマモト「カイちゃん、実はゴブリンの仲間?」
カイゾー「誰が、ゴブリンじゃ!」
モンスターとモンスターのような3人の間に、じりじりと緊迫した空気が作られていく。
リョー「よし、オレがいく!おりゃー」
リョーがスライムに飛び掛かった。
と、同時に、カイゾーも似た者同士のゴブリンに襲い掛かる。
カイゾー「よっしゃあっ」
リョーはやられた。
カイゾーはやられた。
ヤマモト「うそおおー」
一人残されたヤマモトは、逃げることも考えたが、なんとかなるだろうと、持ち前の明るさでスライムとゴブリンと戦い、あっという間に2匹のモンスターをやっつけた。
ヤマモトはリョーとカイゾーの棺を引きずりながら、大きな城下町へ向かった。