ヤマモトは2つの棺をずるずると引きずりながら、城下町にたどり着いた。
3mほどの大きな城壁が、城をぐるりと取り囲んでいる。
大きな門がヤマモトを出迎えた。
その両脇に、体の大きな門番が直立不動に立っていた。
ヤマモト「この街は、なんて街ですか?」
門番A「アラヤードの街だ。ところで、それは…」
門番は棺を心配そうな顔で見下ろしている。
ヤマモト「仲間がモンスターにやられてしまって…」
門番B「魔王を倒すつもりなのか?」
ヤマモト「そのつもりだったんですけど…」
門番A「そうか、頑張ってくれ。オレらはこの街を守ることしかできないから」
門番B「仲間を復活するために来たんだろう?」
ヤマモト「えっ、復活できるんですか?」
門番B「魔王の配下にやられたものは、寿命じゃなければ復活できるみたいだぞ」
門番A「街の左手に大きな教会がある。そこで復活できるはずだ。すでにたくさんの人たちが復活している。」
ヤマモト「ホントですか、よっしゃあ」
途方にくれていたヤマモトは、嬉しさのあまり勢いよく駆け出した。
門番A「おーい」
門番B「棺、忘れているぞー」
棺を取り戻り、ヤマモトは教会を目指した。
城下町は多くの人でにぎわっている。
道は人であふれかえり、あらゆる種類の店が軒を連ねている。
ヤマモトは、左の方を気にしながら歩いていると、遠目に大きな白い十字架が見える。
門番が言っていた教会のようだ。
ヤマモトの足は、自然と速度を増した。
あんなにうるさかった街中がウソのように、教会の周りは荘厳な静けさで満たされていた。
ヤマモトは少し緊張しながら、教会の大きなドアをあける。
ちらほら祈りをささげる人たちが見える。
教会の中にも、大きな十字架が掲げられていた。
歴史を感じさせるが白く美しい十字架である。
その下に、神父らしき人が見える。
ヤマモトは、神父に尋ねた。
ヤマモト「この人たちを復活することができますか?」
神父はゆっくりと一呼吸おいて、言葉を発した。
神父「アナタハ、カミヲシンジマスカ?」
ヤマモト「いいえ」
神父「デハ、フッカツハムリデ…」
ヤマモト「信じます」
神父「ソレナラ、フッカツハデキマス」
ヤマモトは、あまりできのよくない頭で考え始めた。
(人を復活することができるぐらいなら、大概の願いごとは叶うんじゃないのか。だとしたら、オレの割れてるアゴを割れなくすることもできるかもしれない…)
ヤマモト「その前に、1つ聞きたいんですが、この割れたアゴも割れないようにできますか?」
神父「デキルトオモイマス」
ヤマモト「本当ですか?」
神父「デモ、オフセノキンガクガ、タカークナリマス」
ヤマモト「いくらですか?」
神父「100マンゴールドデス」
ヤマモト「高っ」
そんな大金はあるはずもなく、それは願いというより整形ではないのか、という疑惑も浮かび、即座に断念した。
ヤマモトは再び、できのよくない頭で考える。
(アゴ割れでそんなに高いのなら、人を復活させるのにはものすごい額のゴールドが必要なんじゃないだろうか。とてもじゃないがそんなゴールドはないが…)
ヤマモトは、恐る恐る言葉を続けた。
ヤマモト「人を復活するのに、いくらかかるんですか?」
神父「1ゴールドデス」
ヤマモト「やすっ」
神父「ヤスイノハ、マオウヲタオスタメ二、タチアガッタユウシャタチヘノ、カンシャノキモチナノデス」
ヤマモトは感動しながら、神父の前の台に、そっと2ゴールドを乗せ
「お願いします」
と頭を下げた。
神父「デハ、イノリマショウ。ケツアゴヤロウノナカマガ、フッカツデキルヨウ二」
神父は胸の前で手を優しく握り合わせ、静かに目をつむり、祈り始めた。
ヤマモトも同じような格好で、祈り始めた。
目をつむっているヤマモトは、なんとなく陽が差したような明るさを感じた。
カイゾーが復活した。
リョーが復活した。
「ぶうわ」
棺からカイゾーが飛び出した。
「ちょっと~、何これ、暗いんだけど、早くあけてよ~」
リョーの棺はしっかりと蓋が閉められていた。