3人はケピエルの酒場を出た。
何かを成し遂げたようなすっきりとした表情である。
いよいよ、魔王討伐への道が始まる。
が、ケピエルの酒場を飛び出したものの、行く当てがない。
カイゾー「さっきのとこで言ってたけど、なんか最初はみんな南を目指していくらしいよ」
リョー「正直、どこ行っていいかわからないから、とりあえず南に行ってみようか」
ヤマモトは、さっきのダンスでのどが渇いたのか、水をがぶ飲みしている。
3人は、南を目指し歩き始めた。
気持ちのいい、なだらかな草原が続く。
誰かが歩いた後が、道を描き出している。
陽は高く、彩りを増すように、光が降り注ぐ。
3時間ほど、歩いただろうか。
ヤマモトの腹の音と同時に、リョーが叫ぶ。
リョー「あっ、あれ街じゃないきゃなっ」
カイゾー、ヤマモト「きゃな?」
リョー「街だよね、あれ」
噛んだことなんかまるでなかったかのような口ぶりである。
リョーのひん曲がった指でさされた方角には、おぼろげながら街が見える。
カイゾー「結構、大きな街っぽいね、今日中に着くかな」
ヤマモト「疲れたし、お腹すいたし、どっかで休んでから、目指そうと思うが、どうだね諸君?」
カイゾー「急に何様だっ」
リョー「そうだね~、暗くなるまで歩いて、野宿するしかなさそうだね」
陽は傾き、ゆっくりと暗闇が落ちてくる。
ヤマモトがたいまつをかざし、3人は歩を進める。
ヤマモト「って、なんでオレがたいまつ持ってんの、こういうのは勇者が持つんじゃないの?」
リョー「だって、1番似合うじゃん」
カイゾー「いや、ほんと。ヤマちゃんよりたいまつ似合う人見たことないよ」
ヤマモト「え、ほんとに」
リョーとカイゾーは、特に褒めたつもりはないのに、ヤマモトが上機嫌になっているのを見て、ほくそ笑んだ。
リョー「今日は、ここで野宿しようか」
たいまつの燃える音だけが聞こえる静かな夜。
道を少し外れた広場のようになっているところを、野宿をする場所として選んだ。
カイゾー「疲れた~」
足を投げ出して座ったカイゾーの横で、リョーはたいまつの火からたき火を作る。
ヤマモト「見てみて、すごい焼けたよ。ほら、ほら。」
ヤマモトは嬉々として腕を見せてくるが、周りが暗くて焼けているかどうか、よくわからない。
リョーとカイゾーは、どっと疲れを感じ、曖昧にうなずくしかなかった。
携行した食事をすませ、簡単に寝床を作り、3人はたき火を囲むように、それぞれ横になった。
リョー「もう、寝ようか」
疲れているのか、二人は「うん」とだけ小さくうなずいた。
リョーはたき火を消した。
視覚を失ったと思うような闇と、聴覚を失ったと思うような静寂が訪れた。
ヤマモト「あのさ、今誰か好きな人とかいる?」
修学旅行ばりの話題には全く返事がなかった。
ヤマモト「あれ、もう寝た?」
リョーとカイゾーは、起きていた。
ただ、この話を聞く気力がなく、寝たふりをしていた。
そして、3人はいつとも知れず、今日の疲れを取り戻すように寝息を立てはじめた。