執事は朝の光を主人の部屋へ入れる為、
分厚いカーテンを端から全て開けていった。
一面の窓から光が射し広い室内を明るく照らして、執事・影山の黒い燕尾服を浮き上がらせた。
次に影山は、部屋の中央を占める大きなベッドへと近づき、
「御前…」
天蓋から降りる薄い幕越しに中で眠る主人に声をかける。
「御前、御起床の時間です」
「ん、…もぅ…ちょっと…」
幕の中から独特な少し鼻にかかった甘い声が聞こえ、モゾモゾと動く気配はするが、主人は一向に起きてくる様子は無い。
「御前」
毎朝の事ながら寝起きの悪い主人に、影山は秀麗な眉をひそめると、許しも得ずに幕を開き枕に沈む主人の耳元へ唇を寄せた。
「御前、今日は朝から御予定が…」
「ん…、キス…」
まだ目も開かない眠たげな主人は、
仕事を遂行しようとする影山の後頭部を、腕を上げて引き寄せた。
「おはよう…の、キス…」
「…御命令とあらば」
寝言の様なその言葉にも顔色一つ変えず、
影山は命令に従った。
主人のベッドへ躊躇無く乗り上げ跨がると、その身体には触れない様に両腕をついて主人の顔を、唇を見下ろす。
ハラリと落ちた影山の前髪。
主人にかからぬ様に優雅な仕草で耳にかけ、上半身をゆっくりと屈めた。
薄く開く唇に、自分の唇だけをゆっくりと這わす…。
「ぁ…」
主人の閉じた瞼が震え、唇の間に赤い舌が見えた。
その隙間を逃さず、影山は強く唇を押し付けて舌を絡める。
「ぁ…、っ…」
「は…ぁ、…っふ…」
わざと強く音をたてて深く口づけながら、
それでも命じられたキスだけに奉仕する影山に、主人は無意識に硬くなりはじめたソコを擦り付ける様に腰を揺らした。
「御前…」
唇を離し、たしなめる様に主人に呼び掛けると、
「影山…」
ようやく、ゆっくりと瞼を開けて、
主人は目の前の執事の姿を確認した。