4月17日以後、すっかり御前と使用人たちの虜になってしまい耐えられず櫻葉ではないものをこの倉庫に入れる事に。
櫻葉でもなく、影山でもなく、
御前と佐藤。
の、なんでもない(?)話。
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『藤棚』
花散らしの雨が降る。
邸の広大な庭で、
急に降りだした雨は避け様もなく、近くの藤棚へと御前を避難させた。
「佐藤が天気を読み違えるなど珍しいな」
「申し訳ありません」
「かまわない、久しぶりに雨に濡れるのも気持ちの良いものだ」
優しく、気遣い有るお言葉では有るが、
御前に風邪をひかせるなど出来るわけもなく、
「失礼します」
ポケットからハンカチを取り出し、雨にぬれた御前の肩から滴を払った。
御前の美しい黒髪から滴る雫が頬を伝い落ち、私の手を濡らす…。
雨は止みそうもなく、
カーテンの様に外界からこの藤棚の中の御前と私を隔離する。
豊かな紫の房を垂らす藤が、雨にも消せない濃密な香りを籠らせる。
「佐藤」
不意に呼ばれた名に顔を上げると、
御前の、
女性にしか見せない花の様な微笑みを
真正面に向けられ、
息が…止まる。
「他の者には秘密だ…」
ふわりと寄せられた唇は、雨に濡れ冷たく、藤の香りが現実味を奪う。
夢の如き一瞬に、
この私が、崩折れそうになった。
「ご…」
なんとか発っしようとする言葉は、御前の差し出された指に止められ形を成さず、
「秘密だ…、私と佐藤の」
その言葉だけが私の頭に響いた。
くふふ、といたずらに笑い、
御前が藤棚の外へと歩き出すと、
雨は、止んだ。
立ち尽くす私を置いていく御前の後ろ姿に、
我にかえった私は、
急いで御前の後を追った。