「しょおちゃん、お疲れさま」
仕事で疲れて帰ってくると、
白い花束を持った雅紀が、
ドアの前に立っていた。
「そして、35歳おめでたまきん!」
にこって、疲れも溶けてく極上の微笑み。
…『前』と同じだ。
そう思っていると、『前』とは違って駆け寄ってきた雅紀が俺に抱きついてきた。
「あ、ありがたまきん」
ちょっと、『前』の事を思い出して反応が遅れた俺はよろめいて情けない姿を晒してしまった。
「くふふ、しょおちゃんビックリした?」
「今日って、ロケじゃなかった?」
今年の誕生日は一緒に祝えないって言ってたのに。
「早く終わらせて帰ってきちゃった」
くふふ。
って耳許で聞こえる可愛い笑い声。
それだけで、気持ちがあったかくなって強く抱き締めた。
「今度こそ、しょおちゃんの言う『白い薔薇の花束』だよ」
外はさすがに寒いから、ドアを開けて二人で入ると改めて雅紀から花束を貰った。
「前はたしか白いチューリップの花束だったと思うけど」
「しょおちゃん、俺から貰ったのは『白い薔薇の花束だ』って色んなとこで言うんだもん」
靴を脱いだ雅紀は、
さっさと部屋に入ってった。
白い花の花束…。
『前』に貰ったのは確かにチューリップ。
だけど白いチューリップって言いたくなくて、白い薔薇だって何年も言い続けた。
馬鹿みたいだけど、
そんな俺の腕のなかに、欲しかった白い薔薇の花束。
嬉しくて…。
俺はそっと抱きしめて、白い薔薇の香りを胸いっぱいに吸いこんだ。