「その花瓶…」
花束は仕事柄良く貰うけど、生ける花瓶も無いし世話も面倒だからと言って親しいスタッフに貰ってもらう。
雅紀の出してきた花瓶は、
確かに『前』に貰った花を生けるのに、唯一買った花瓶だった。
その花以外は生ける事も無く、仕舞いっぱなしだった花瓶。
「よく解ったな、花瓶が有るって」
「しょおちゃんの部屋を誰が掃除してると思ってんの?」
雅紀は俺から白い薔薇の花束を受けとると、花瓶にさしていった。
白い薔薇だけだから、そのまま生けてもなかなか様になる。豪華な、華やぐダイニングになった。
「くふふ…」
薔薇を生けおわった雅紀は、すんげぇ可愛い小悪魔な表情で俺を見て笑った。
「俺ね、わかっちゃったんだ」
ニコニコ嬉しそうな小悪魔。
「調べたら白いチューリップの花言葉は『失われた愛』なんだってね、で、白い薔薇は『私はあなたに相応しい』」
「翔ちゃんは白い薔薇の方が欲しかったんでしょ?」
図星…。
を刺されて、俺はなんも言えねぇ。
小悪魔は可愛い顔で俺を追い込んでいく。
「もー、しょおちゃんいまだに俺から貰った『白い薔薇の花束』が嬉しかったとか言うから、今度はちゃんと『白い薔薇の花束』ね!」
してやったり!な顔も可愛い、俺の小悪魔。
俺を追い込むなんてこの小悪魔ぐらいだ。
最近「天使」とか「天使ちゃん」とか言われてるけど、こんな小悪魔な雅紀を見てるのは俺だけだろ?
「『私は、あなたに相応しい』?」
するりと長い腕を俺の首に巻き付けて、
小悪魔が、35歳になったばかりの俺を堕としにかかってきた。