「ああ、なんたる事だ…」
ホテルの部屋に戻り、急いで荷造りをする。
荷物という荷物もなく、服や散らばった資料を鞄に詰めながら頭をかきむしる。
「これは病だ」
その証拠に、口のなかは渇き
動悸は激しく、熱まで出ていそうだ。
ホテルのロビーで待ってもらっているヤマモトさんを思い浮かべ、私は更に熱が高くなる。
「顔が熱い…」
諸症状から病名を導き出す。
いつもしている事なのに、目の前の事実ばかりに追われて何も考えられない。
一緒にいて、その声を聞いて笑顔を見ていると、
緊張に…、
その苦しさと心地よさに、
呼吸も止まりそうになる…。
今までの数知れない他人との付き合いのなかで培ってきた、私なりの常識が崩れていく。
離れ難く…離したく無い…。
自分のしている行動の常識性に自信が無くなり、この部屋を出たくない気持ちと、
早く、ヤマモトさんの顔が見たい
その気持ちの葛藤に苛まされる。
しかし、彼の事を思い浮かべると、とたんに胸のあたりが苦しくなり、
私は沸き上がるナニモノカに名前も付けれず、
直ぐに部屋を後にした。