神様のでびくろくん(聴診器で) | うさたの倉庫

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「…それで、その後はどうなったの?」
たった今、読み聞かせを終えたばかりの本を、ヒカルが再び手に取る。
「さぁ… それは各自、自由に想像するということではないのかな?」
さりげなく本を取り上げると、腕の中で恨めしげに振り向かれる。
「イチさん、もう少し読んで? 今日はまだ眠くない…」
「ヒカル、もう眠りなさい。 まだ本調子ではないのだよ。」
「…じゃあ、もう少しだけ、イチさんこうしててくれる?」
「これでは休まらないではないか…」
「ううん、休まるよ。 すっごく安心する…」
まだ微熱が残るかのような身体を預けられ、心地良い重みを感じていると
ヒカルが無邪気にこちらを見上げてくる…


「イチさんは?さっきのお話の二人みたいに僕の考えてる事、わかる?」
我が細君は頻繁に...いや、時々子供の様な事を言う。それが決して苛立たないのは、ヒカルの黒く美しい純粋な瞳のせいだろう。
細君の無垢な心は、今まで大切に護られて育ってきた奇跡だ。私の腕の中にいる事が今だに信じらず、存在を確かめる様に抱き締めてしまう。
「私は医者だから、この話の様にヒカルの考えてる事はわからぬが、身体の事ならいささかわかる。ヒカルの身体に聞いてみようか?」
側の鞄から聴診器を取りだすと、細君は子供同士のごっこ遊びを始める様に楽しそうに服のボタンを外していく。
我ながら知人には決して見せられぬ姿だ。
神妙な顔つきで聴診器を当てた。
「ふむ...ヒカルは明日は書店に出勤したいと思っている」
「わぁ!正解!イチさん、凄い!」
「だけど駄目だ。ヒカルの身体がまだ行けないと言っている」
「...そうなの?」
残念そうな声に可哀想になるが、医者としては患者の身体を第一に考えなければならない。辛いところだ。
「ねぇ、イチさん。他には?」
聴診器からトクトクと聞こえる心音。
幼子の様にキラキラと輝く瞳に、少しイタズラ心がおこり、...唇を寄せ、口づけた...。
「ヒカルは、ドキドキしている」

とたんに早くなる心音が愛しい。
「ドキドキ...苦しい......イチさんが...」
一瞬で潤み、大人の艶へ変化するヒカルの黒い瞳。
「イチさんが、かっこ良くて...」
恥ずかしげに伏せられた長い睫毛の震えるのを見ながら、そっと舌を差し入れると、更にドクドクと早く大きく脈打つ心臓、まるでヒカルの無垢な命をこの手に掴んでいる様な感覚になる。
「んっ、...ふ...」
そのまま蒲団に横たえ息を解放すると、熱く甘い声でヒカルが囁いた。
「イチさんは、僕の運命の人。僕を変えてくれる」