マッチングアプリ
その女と知り合ったのは昨年の6月だった。
私は、某マッチングアプリに4年前から登録していて、実際に会うのは二人目だった。
一人目は、夫に先立たれていて小学校6年生の娘を養っている一児の母だった。
彼女とは全部で5回ほど会ったが、結局うまく続かなかった。
同い年で近くの町に住んでいるということもあり、話が合うかな、と考えていたが、相手に何だかんだ理由をつけてデートの約束をドタキャンされることが多く、いわゆる自然消滅をしたのだ。
1番初めに会った時は、街の駅の近くの居酒屋だった。
チェーン店だが、半個室状態なので他人の目を気にすることなく気軽に話せると思い、そこに指定した。
2回目は街とは反対の西の方にある海沿いの割烹料理屋風の海鮮料理屋で食事した。
3回目は、三日日にあるハンバーガー屋、4回目は朝のコメダ珈琲だった。
私達はなるべくお互いのことを知りたいと思っていて、多少の緊張をしながらも仕事のこと、生活のこと、趣味など分け隔てなく話し合った。
飲食代は私が3分の2を持つことになり、そのことに対しても彼女は特に負い目を感じてる様子はなかった。
仕事をしていると言えど、親と同居している一児の母だ。
経済的に豊かなわけではない。
そんなある日、別れがきた。
ドタキャンの理由は大体が生理などによる体調不良だったが、それが何回も続いたので私は連絡を控えるようにした。
私は相手の身体の弱さを考えるよりも怒りを通り越して呆れ返っていた。
それで破綻を迎えた。
私は不動産関係の会社に勤めていて、自分の土地・テナントもそこで管理してもらっていて、アプリにもそのことを載せていた。
派遣会社時代に知り合った友人から、なるべく誇大化してプロフィールを記載しない方がいい、写真は控えめだがこだわった撮り方の方がいいと言われたので、敢えてそうした。
ただ、趣味の欄だけは相手と合う人物と知り合いたかったのでなるべく多くコミュニティに入り、分かりやすくした。
私は音楽の他に服が好きで、主にデザイナーズブランドのコミュニティに入りそこで相手を見つけようとしたのだ。
入って最初の半年くらいは反応がなかった。
こんなのに意味があるのか、私は不安になっていた。
そんな矢先、Cというブランド好きのコミュニティの女から、いいねボタンが押された。
相手は46歳、顔写真は厚化粧で正直好みのタイプでないし、なにしろ40代の年上のということもあり気乗りしなかったが、虫の知らせか連絡を取ってみようと思った。
「私もCが好きで、よくショップで買ってます。
Aさんもよく買われるんですか?」
そんなような内容のメールを送った。
すぐ
『はい、そうです。
昔から好きです。Sというブランドも最近注目してます。』
と返信がきて、
私は
「よかったら一緒にショッピングに行きませんか?」とメールした。
少し早い展開だったが、ダラダラと世間話をしても仕方ないと思ったので、そう決意した。
2時間も経たないうちに、OKのメールがきて交通費を私の負担ということを条件に私たちは会うことになった。
6月某日に。
京都に女は住んでいて、私は浜松だったので中間の名古屋で会うことにした。
6月なので、気温も高めになってくる時期だから私は冬に比べるとあまりお洒落はできないなと思いつつも、試行錯誤しイッセイミヤケのレーヨン製のアロハシャツを選んだ。
1年前にデパートのショップで買ったものだったが、青と白のコントラストで見栄えは悪くないと思った。
コレクションラインということもあり、多少なりとも自信があった。
私は鏡を見ながら自分に大丈夫だ、と言い聞かせ家を出た。
女とは栄で会うことになっていた。
LCという商業施設の前で待ち合わせることにしていたのだ。
横断歩道の横に建物はあり、人の行き交いが絶え間ない。
私は所在なさを感じながらも、ぼーっと立ち尽くし、じっと来るのを待った。
私が到着してから20分後、女は現れた。
女はマッチングアプリのプロフィール写真と全然違く、そこまで厚化粧ではなく、どちらかというと美人の部類だった。
年齢はプロフィールの紹介の46歳とさほど変わらないようだったが。
「はじめまして。もしかしてAさんですか?」
『そうです。〜さんですか?』
私は頷き、女の表情が微かに明るくなるのがわかった。
「私、ここによく来るんです。待ち合わせで使ったのは初めてだけど。よかったらLC見てきませんか?」
『ええ、Cも入ってるし丁度いいですね。見てきましょう』
女は
話を聞いたところ女は49だった。
3歳違ったわけだが、マッチングアプリなんてそんなものだろうとたかを括った。
-続く