NSさん74歳

当院でたまたま撮っていた

二年前の胸レントゲンには異常なし。

とくに通院すべき疾患もなかった。

 

ことし耳鼻科疾患で 病院に。

レントゲンで左胸水を指摘され、

病院で精査 いきなり STAGE4の肺癌。

「治療の方法が無い」

との方針で、緩和治療目的に紹介されてきた。

 

もともとの本人は、ことぶきによくありがちな

素朴な変キャラ。

でも状態はよく理解されて

「納得できない」

「もっと生きていたい」

の発言。

 

本人が受け入れられない状態でも

看取り医療が始まった。

 

「なんとか治したい」

の希望をすてきれない。

当然のことだ。

 

最近の肺がんは分子標的薬など

高価であるが 期待できる治療法もあるので、

もう一度病院の専門医へ戻した。

 

が、方針は同じだった。

理由は「適応外」

 

その適応外の具体的な詳細理由は不明のままだ。

 

最近ちょくちょくあるのは

「そのような高額医療の適応の価値」つまりは

「命の値踏み」

これを感じざるを得なかった。

 

さりとて、

当院でその治療ができるわけでもなく、

完全に受け身。

 

精神的に不安をかかえ、

そのうち左胸に痛みが出はじめた。

 

「不安と痛み」

にて携帯からのCALLは頻回。

朝に夕に、ケアマネ、訪問看護、クリニック受付、

ドクターへ電話。

なかなか話が終わらない 訴え。

 

その都度に麻薬を精神安定剤を

バンバン増やした。

 

訪問診療にいくと

わざわざ座って、手を擦りあわせて拝んでくる。

「おねがいだからいたみをトッテクダサイ」

いままでに使った経験のない麻薬の貼付薬と座薬と

内服の量で、ようやく落ち着き始めたのは2週間前のこと。

 

それでも

少し不安になると、

簡易宿泊所の帳場さんへCALL。

「救急車を呼んで欲しい」

と。

 

そんなことを繰り返しつつ。

一週間まえからは、どうもすべてを受け入れ

いたみも治まり

穏やかになった。

 

昨日朝8時。

ヘルパー訪室時はまだ呼吸もあり、

会話も可能

「もう 痛くないよ」

が最期の言葉だった。

 

途中、チームのみなさんが、麻薬の効果のスピードを超える

痛みと不安の進行のため、相当 苦労させられたが、

最期にこの言葉が聞けて、ちょっと安心した。

 

安らかなご冥福をいのります。