TMさん87歳が2畳のお部屋で

息をひきとっていた。

 

5月21日のこと。

普段は訪問診療の患者さんTMさんを、

Nケアマネさんが車いすにて

連れて午後に緊急受診。

 

認知症 高度難聴 糖尿病

 

二年前コロナにかかって入院。

筋力低下で歩けなくなったことをキッカケに

訪問診療。

 

筋金入りの認知症。

しかも耳聞こえない。

 

住居は2畳のひと間。

古風な簡易宿泊所の二階。

コトブキの簡易宿泊所の中でも

最も旧式で最も狭い。

 

ここに介護ベッドで。

転居せずに生活していた。

 

訪問診療を始めて2ヶ月の頃。

「糖尿もあるし そろそろ 採血しないとな・・・」

「でも採血の説明しても入るかな???」

「でも意を決して今日はやろう!!」

 

と思って、

診察を終えていよいよ採血。

2畳なので看護師と入れ替わって。

私は部屋の外で待機。

M看護師がかしづいて、

「採血しますね」

と耳元。大きな声で予告。

 

その直後

「あ“~!」

「このバカ女!! いたい!!」

と廊下にまで響き渡る叫び声。

それでもMは最後まで採血をし終えた。

 

以後、TMさんの話になると

Mナースは「バカ女」として職員からイジられることに。

 

二年間

以後 採血することも無く

元気に

みんなに愛されて過ごした。

 

ギャンブル大好き。

エレベータのない簡易宿泊所の階段を自分でおりて賭け事に。

 

最近その体力も無くなり 食えなくなって

とうとう 脱水から急変。

5/21には10年間連れ添ったケアマネさんが

「午前中はマアマアだったんですが・・・」

と。

心配して、意を決して、車いすに乗せて、外来へ。

 

到着時は死前喘鳴になっていて

血圧も60。

意識も無し(なので採血可能)

足を挙上して、酸素吸入、点滴したら、

ニコッと笑って返事した。

 

とりあえず救命→民間救急依頼→在宅酸素導入

にて帰宅。

 

採血結果は高度の腎不全。

翌朝 ヘルパー訪問時には2畳のベッドで

亡くなられていた。

 

ある意味で

ピンピンころり。

老衰からの脱水・急性腎不全である。

 

それにしても

「このバカ女!」

は笑えるし

それを言われて 余計にTMさんが好きになった

Mナースの存在も心地良い。

 

 

今月96歳になる

超元気な母がさすがに終活を始めた。

 

「え!!これまでしてなかったの?」

と驚かれる諸氏も多数おられよう。

 

そうなんです。

病気はいくつかあったんですが、

月に2回の訪問診療中。

一つずつ 早期克服 で現在に至ります。

 

 

さて、

終活の一環。

14年前に90歳で急逝した父が

集めた古銭や外国コインやワケわかんないメダル。

おまけに 引き出物で 使ってない 汁椀などが

出て来た。

 

これらを両手にぶら下げて、

休日の水曜日。

天気もいいし、せっかくだから 歩いて行こう

と。

重いけど帰りは手ぶらだろうから  

あるいて行こう

と。

興味津々。

今月オープンの緑園の「大当たり」

とかいう古銭ショップに入った。

 

「その道12年」

のニイチャン~(ややオジサン)は

じゃらじゃらと古銭や外国コインを

眺めて

ものの5分。

 

「マコトに申しわけありません」

「お引き取りできるのはテレフォンカード 一枚200x2=400円

 と ニッポンとアメリカの勲章 1個 50円x2 =100円

の総額500円です」

 

要は コレクター達がよだれを垂らすようなシロモノではない

ということ。

 

お店オ-プンしたばかりなので

それでも

サービスはしっかりと。

 

「お客様 銀行で換金できるものだけ、べつにまとめて袋にいれておきます」

 

小判や台湾の古銭をはじいてくれた。

 

その袋を

神奈川医師信用金庫に持参。

「先生、当店では換金は不可能です」

「日本銀行の横浜支店へ行ってください」

 

日銀横浜支店に電話したら、

「何年の いくらのコインが何枚 百円札 十円札が何枚かを

自分で確認して、電話で報告してから、面談予約をお願いします」

と、もはや 不可能であきらめた方が良さそうな解決法を教えてくれた。

 

「他に方法ないんすか??」

と聞いたら

「メガバンクはムリですね」

「あなたが、銀行口座を持ってる地元の信用金庫なら

手数料払って 換金もしくは通帳への入金が認められるはず」

 

アドバイス。

来週 あたりに「かながわ信用金庫」に行ってみよう。

 

みなさん

くれぐれも

コインや古銭収集趣味には気をつけましょう。

 

本人が満足するならOK

ですが、

「将来価値が出るかもしれない」

と趣味に転じた我がオヤジ。

 

母に顛末報告したら

「お父ちゃんがっかりするやろなあ」

との感想であった。

 

この一文にもならない「天保通宝」

のみ 記念記憶にとっておこう。

 

※5/20後日談

今日昼休みにかながわ信用金庫へ行きました。

換金結果は1万5001円でした。

壱円札は受付不可。

所要時間40分。

「職員がコイン数えますので、お待ちください」

口座があるから受けてくれる顧客へのサービス作業。

気の毒なので預金通帳に入れた。

お父ちゃんありがとうございます。

 

「手数料は?」

→「コインが500個以下なので不要です」

とのことでした。

これから古銭を換金されようとする人へ

ご参考まで。

 

81歳のMさんが

紹介されて来たのが昨年4月。

昨日 簡易宿泊所にて息をひきとった。

 

その二時間前に定期の訪問診療。

本人は最近

訪問看護には

「これまでに無いくらい穏やかなきもちだよ」

と。

私には訪問時

「呼吸が止まってもいいから 眠りたい」

と。

「タバコが吸いたい」

と。

 

Mさんは

肺癌

基幹病院からの看取り目的の紹介状と

もともと

依存症にて10年以上通院していた

寿町内の診療所の先生からの紹介状

を持ってケアマネさんと

ポーラのクリニックへ。

 

まだまだ元気な感じで飄々として

外にも出かけられたし

カネは帳場さんに財布のヒモを握られ

そこは不自由だが

その他は自由気ままな余生。

 

年明けから鎮痛剤内服

その後 座薬

その後 麻薬

で それでも外出できて

すきなもんたべて

たばこ吸って。

 

数日前から

出かけられなくなって

 

人気者だから

前のクリニックのスタッフやらドクターが

お見舞いに

 

そして

私に最後のお願い

「タバコが吸いたい」

 

死前喘鳴が始まって

ノドはゴロゴロ

 

喫わせてあげたかったが

12人回る往診の第一番め

自分で着火できない

吸い終わるまで待ってなきゃいけない

 

の理由で

「ヘルパーさん来たらね」

で逃げた。

 

まさか 二時間後に亡くなるとは思わなかった。

 

すわせてあげればよかった。

 

それだけが心残りだが、

それ以外はとてもいい看取りだった。

 

前のクリニックからは主治医や看護師も

面会に

穏やかな死に顔を

みてくれた。

 

昨年 Mさんのお母さんが100歳で亡くなられたそうだ。

M さんのベッドサイドにはその葬儀の写真が置いてあった。

Mさん本人は“ワケアリ寿人間”なので参列しなかったそうだ。

恐らくは“親不孝もん”だったんだろうが、

最大の親不孝といわれる

“親より先”ではなかった。

 

それがせめてもの救いです。

 

かかわったみなさん

お見舞いのみなさん

おつかれさまでした

有り難うございました

 

これぞ コトブキ の看取りでした。