寿地区の簡易宿泊所に住む高齢者は

その9割は生活保護の受給者である。

残り1割は年金生活者。

 

つまり 若い頃から働いてまじめに年金を払い続けた結果、1割に該当した人達。

 

皮肉なことに、

若い頃から

年金を払うことなく 自由奔放に 生きてきた人達は

ノ-プロブレムで生活保護の受給対象となり、

医療費 介護費 住居費 すべてゼロ。

看取り代も 当然ゼロ。

 

疾患や年齢から鑑みて

今後 生保を打ち切られることは無い。

つまり生きている限り、

安心して人生の最期まで生活が可能となる。

通帳の残金をカウントして恐れる必要は無い。

 

OTさんは65歳。元警備員らしい。

救急搬送先の病院で3日前に亡くなったそうだ。

簡易宿泊所の帳場さんから連絡が入った。

 

 

病名は

アルコール性肝硬変からの急性腎不全。

 

4年前に

腹水貯留 脱水症にて救急入院。

退院時に紹介されて 当院外来へ

 

データはバリバリの肝硬変。

食道静脈瘤や肝臓癌のチェックなど

検査をお奨めしたが、

受け入れない。

 

2年前に

食道静脈瘤が破裂し、簡易宿泊所の隣人が救急車を。

緊急入院先で内視鏡的止血に成功、

情報提供手紙には

「退院後 『お金がかかる』ので 経過観察通院を拒否」

と。

 

この二年間

当院からの訪問看護は受け入れた。

が、 定期的介護や状態悪化時の臨時往診は

「お金がかかるから」

と拒否。

訪問看護師は

状態観察と話し相手として

お金を払ってもよい

と判断したのだろう。

 

採血検査は横浜市の国民健康保険特定健診項目のみ

受け入れた。

 

この間、酒を飲み腹水を貯めて下痢。

外来に来ては

私に注意され

繰り返し。

 

そろそろヤバイ。

とおもったので、

外来で関係者を集めて

本人と人生会議(ACP)

 

以下本人の発言。

検査もやらない

緊急時にはそりゃあ救急車呼んでもらうしかないでしょ

入院もその時にはしょうがない

これまでもそうだったんだから

 

(腹水の治療、破裂前の静脈瘤治療など、緊急ではない入院でできることはたくさんありますが)

いいです、行きたくない、

緊急のときにまた考えます

 

死ぬときゃ死ぬんです

そういう人達をみてきました

患者の権利ですから、検査しません 今日は帰ります

 

そして約二週間後に状態悪化。

となり部屋の人が救急車を呼び、

入院後 約半月で亡くなった。

 

訪問看護師によれば

「ン千万も貯まってたらしいですよ」

 

貯めることに生きがいと自己肯定感を感じていたのか?

貯めた数字が酒以外にて減ることを受け入れられなかったのか?

 

判定はつかない。

 

が、

はっきりしていることは

酒に命をささげ、

公費にお世話にならなかった

人生である。

 

近親者は どうも 音信不通でいるらしい。

ン千万円は その近親者に?

それとも 銀行通帳のままに?

それとも 国庫へ?

 

私には分からない。