幸うすい55歳

 

のHSさんは、おひな祭りの日に

簡易宿泊所内亡くなった状態で訪問看護師に発見された。

 

初診は10年前のこと。

近くの病院から、「糖尿病の継続治療を」

との紹介状を持って、ヘルパーさんに連れられての初回受診であった。

 

人なつっこい笑顔で初対面でおびえてる

のが第一印象。

 

精神科専門の病院にも併診中で、

そこでの病名は 統合失調症 覚醒剤使用歴。

(主訴および主症状)としての記載事項はすごい。

幻聴、被害、関係妄想、活発な独語・空笑、被注察感、動悸・呼吸苦・多汗、暗輝閃光、不安緊張パニック発作、睡眠障害、解離性強直けいれん(意識あり)、対人恐怖、赤面症

 

この10年間。

統合失調症による精神科病院へは数回、一般病院へも数回の入院歴がある。

一般病院への入院理由は

自殺企図によるインスリン過量自己注射、急性腎不全、膿胸、コロナによる脱水症、右放線冠脳梗塞。

 

いずれも40-50歳代にしては

「ふつうは無いよな・・・」

と思う病名のオンパレード。

 

今回の死因をスタッフ達と推察してみたが、

まったくもって分からない。

2月16日の外来でもとくに自死を示唆するような言動はなかった。低血糖? 脳梗塞??

 

このブログでは、

亡くなられた人達の人となり や

亡くなるまでの経緯

を記すことによって、

その人の命と生きざま、生きた証への尊厳を紹介していくことにしている。

 

HSさんの個人史は壮絶。

一人っ子、父は港湾労働者でその弟はコトブキで白骨死体として発見。

母は統合失調症で、HSさんが入退院を繰り返した精神病院に入退院を繰り返していた。

両親は離婚して共に再婚。

高校卒後に父と同居、料理店、港湾労働、フォークリフト、とび職など転々。

24歳くらいから、統合失調症による精神不安定感が出現増悪し、精神科病院への入院通院が始まっている。

 

亡くなられて、

このHSさんの生涯をどのように表現したら、

本人への尊厳とみなさんへの紹介が可能なのか?

と考えた。

 

覚醒剤使用歴があるらしいので、

統合失調症とどのように相互関連しているのか?

を判定することは難しい。

 

ことぶきに生きる人達なかで、

HSさんのような境遇の人達は

決して少なくない。

 

HSさんのように

家族からの遺伝的素因を持って生まれて

両親の離婚に遭遇し、

予定どうりに

統合失調症と糖尿病に罹患し、

社会に居場所を見つけられず、

生保と精神障害の愛の手帳を受給し、

医療者や介護者に愛してもらうために、

迎合するような人なつっこい笑みを絶やさず、

おびえながら生きる

ことを続けるしか

生きるスベのない人生。

 

55年と6ヶ月

続けなければ

ならなかった。

 

55歳とは思えない

小中学生の少年のような

素朴さ

かわいがられるような

笑顔

が彼の財産だったように

思える。

 

もしも

彼と

同じ境遇と同じ経緯で

生きろ

といわれたら

どうしよう・・・・・・