NSさん

85歳 老衰

 

初診は67歳だったから

18年間通院してくれたことになる。

 

昨日のお昼。

中区休日診療所に勤務中のこと。

朝からインフルBとコロナばっかり。

まったく同じ問診と診察と処方を繰り返し繰り返し。

イイカゲンいやになった頃。

 

ヘルパー男性から電話。

「NSさん呼吸止まってます」

 

近場だったので、

「直ぐ行きます」

 

昼休みをもらって

看取りに出向いた。

 

部屋では

2月22日に訪問した時と

同じ顔で亡くなっていた。

橫では

小林幸子のDVDが回っていた。

 

「好きでしたから小林幸子」

と、私を待っててくれた中年オジサンのヘルパーさん。

 

私が

「みごとな老衰ですよ」

と伝えたら、

「そうですね。」

「昨日は久しぶりに晴れたんで、

くるま椅子に乗っけて、

外でお汁粉(自販機)飲んだんです。」

 

と話してくれた。

 

病名は

高血圧、糖尿病、左失明(緑内障)、右眼高度な視力低下(糖尿病)

昨年8月に急性胆嚢炎で入院2ヶ月。

寝たきりとなり褥瘡付きで退院してきた。

その後、褥瘡は看護+介護で改善したが、

要介護5のベッド上生活。

秋には右膝の偽痛風による発熱と食思低下。

これらが相まって

衰弱状態へ。

 

血液検査しても何も無い

「老衰」

としか言えない

経時的衰え方。

 

「老衰」

の衰え方は

波がある。

今日は少しよくて、食べ方が増えるが

明日になると食べ方が激減・・・。

 

このたべられない状態に

もし点滴をすると

亡くなる数日前から

喉のゴロゴロ音(死前喘鳴)が出始める。

 

今回はチームメンバーに

「老衰だから」

と言い続けた。

 

だから点滴もしなかった。

必要な時、ホントに好きなモノを飲める食えるとき、

のみ、少量を口にすることができた。

 

「老衰」

という病名にもならない死因名

は、方針を間違うと患者を苦痛に落とし込むが、

「そのまま」

にしておいてあげると

実に穏やかな経過をたどるものである。

 

人間の生と死

は神々しいほどに

自然なものである。

 

を教えてくれた気がする。