大雪の日、

しかも豪雪の時間帯の夕がた、

とある一般家庭へ初訪問した。

訪問先は高速使えば20分で行けるところ。

一般道で80分かかった。

 

患者さんは85歳の男性。

2011年からポーラのクリニックへ。

同い年の奥様も一緒にホームドクタ-として、

信頼してくれて通院開始。

 

元はといえば、25年前。

私の子供達が習い事として、このご夫妻にお世話になったことが始まり。

ほとんど家族ぐるみのおつきあいになり、

その子供達(といってももう40代50代)もかかりつけに。

 

今回の患者さんであるお父さんは、とても穏やかな人。

糖尿病、心房細動、僧帽弁閉鎖不全症で転院され、ポーラのクリニックへの通院が始まった。

その後心臓は弁形成手術を天皇陛下の執刀医である天野DRにお願いし、大成功。

心房細動による小脳梗塞が出たが、幸いとても軽症で済んだ。

歩きやPOOLなど頑張って来られたが、

高齢化+糖尿病にて認知症が目立ちはじめ、専門医にも相談通院したがさしたる治療法はなく、

だんだんと運動量が減って、要介護2へ。

小脳梗塞以後は抗血小板薬と抗凝固薬を併用していた。

 

にもかかわらず、

今年の正月明けに大きな脳梗塞発症。

救急搬送され、急性期治療をされたが、右半身完全麻痺+失語+嚥下障害が残った。

1月26日にリハビリ病院に転院してから、

体力的?気力的?に嚥下ができなくなった。

感情失禁も手伝って、わずか15分の家族面会の終了時には号泣をするようになり、

家族は

「家に帰れば気力で食べれるようになるかも・・・」

「ダメなら看取りでもいいので・・」

「家で過ごさせてあげたい」

 

このリクエストに応えて、

2月5日月曜日を退院日に入院先と交渉し、許可を得た。

 

大雪の懸念もされたが退院決行。

みまもりチームを現場で即席結成のため、

ケアマネ、訪問看護、訪問リハ、薬剤師に緊急招集をかけたところ、「せんせいがくるなら、いかないわけには・・・」

みなさん豪雪ものともせず集まってくれていた。

 

約二時間、

ベッドサイドにて担当者会議を行い、とりあえずの一週間のチームメンバーの動きを指示。

 

ここまでは、ことぶきでやってる仕事であるが、

今回は大きく違う点は、

①    愛情イッパイの家族がいる。特に長女はとある分野での有名人。長男は国際線のパイロット。

二人とも父親に対しての敬愛が強い。

 

②    病前から、患者さんとの個人的おつきあいがあるので、「尊厳死を希望する」

キャラであるのは明白

 

この二つが私への命題となった。

延命治療や再入院や胃瘻や経鼻経管栄養や、その苦痛度と救命病状改善のための治療法のメリットデメリット。

酸素吸入や口腔咽頭の吸引のメリット・デメリット。

をLINEを通じて徹底的に家族へ説明することにより、

家族は腹をくくってくれた。

 

〇「機首が下がりはじめたので、着陸態勢に入った」

「着陸までには揺れたり不安感がつのったりするが、落ちついて動じないこと」

「決してうろたえて救急車を呼んだりしない。」

「不安になったら電話して下さい。」

〇「人は産まれてくる時真っ暗な産道を必死に通り抜けて来る、けどそれを苦痛として覚えている人は誰もいません。

それと同じようにこの戻り道もご本人は苦痛として感じません。

 

聴覚は最後まで保たれています。

耳元で声かけてあげると聞こえてますよ。「しつこい!黙れ!」と言われるくらい話しかけてあげて下さい」

 

この二つのアドバイス

は寿での単身独居者の看取りにはしたことがない。

 

今回のソトブキでの在宅看取りは、私にとっては20年の経験の応用編である。

逝くひとの状態をよく観察して、やるべきこととやらないべきことを総合判断指示するのが、

医師の役割。

 

今回思い知って勉強になったのが、

新生即席チームのメンバーがコトブキに連れて帰りたいくらいとても百戦錬磨であること。

時代は進歩している。