ナゾのおじいさんYSさん93歳が 昨日の朝息をひきとっていた。

 

数か月前から食べかたが落ちて、

もともとやせてたのが

さらに やせこけて

数日まえから のどがごろごろと鳴り始めて(死前喘鳴)

金曜日に臨時往診

「日曜日かな?」

と予想し、

それが当たった。

 

寿町 簡易宿泊所内での在宅看取り。

死因は 「老衰」

 

初診は2012年。

「拡張型心筋症で両心室ペーシングの適応を説得したが、受け入れないので・・・」

と、 いたく不満そうな内容の基幹病院循環器内科医からの紹介状を持って

ケアマネさんと外来受診された。

 

寿のおじさん達の中には、

ドクターのプライドの導火線に火をつける患者さんは、イッパイいる。

 

循環器内科医はACTIVE AGGRESSIVE AMBITIOUS のトリプルA

のキャラの人が多いので、

 

「命を助けてやろうと思って提案してるのに、受け入れないとは!!」

とプライド地雷を踏まれて、

 

「ではやることがないので他へ行ってください」

と、患者を突き放すことは容易に想像がつく。

 

当院外来受診から二年後、

体力低下、排尿障害にて通院不能となり、

訪問診療へと切り替え

尿路カテーテルを留置した。

 

以後10年。

在宅訪問診療を続けた。

担当医は最初は私、その後安定して心機能も改善してきたのでN医師、この一年は非常勤のS医師に任せた。

 

テレビを見るわけでも無く、ラジオを聴くわけでも、新聞や本を読むわけでも無い。

 

訪問すると、いつも天井をみつめて自分から話すことは無い。

イエスノーの意志は明確にするが、話しかけに笑うことは一回も無い。

 

細かいことにはこだわりが強く、尿路カテの固定の仕方やオムツの止めシールの貼る角度が気に入らないと、

目を三角にして怒る。

尿路カテの交換挿入の際には、通常の患者の3倍くらいの表現で痛がる。

 

ひとことでいえば、

人嫌いのHSP(HYPER SENSITIVE PERSONALITY)

 

だから、自発的に語ることもなく、

寿住人に時にみかけるホラ的自慢話などは絶対にしない。

 

亡くなって初めて、

20年来コンタクトのあったヘルパーの女性(昨日朝の第一発見者)が

「家族全員が自殺したってひとこときいたことがある」

 

今朝の訪問看護師ミーティングで、

担当だった看護師が、

「東京神田の生まれって言ってました」

 

私が知り得た彼の過去は

死後にきいた以上のふたつのみである。

 

ただ、一日中天井を見続けて10年。

「おつかれさまでした」

としか言いようがない。

 

亡くなる2日前のこと、

ACP(ADVANCED CARE PLANNING 日本語 人生会議)

再度の意志確認に出向いたY医師とIナースの

「入院する?」

の問いかけには、明確にノーの意志表示であった。

 

病院医師からの提案を何度も拒否したように、

彼の路線はブレなかった。

 

「死ぬ理由がないのなら、生きててもいいけど、

入院してまで生きていたいと思わない」

 

が彼の信条であった。

 

あっぱれ!