寿町の簡易宿泊所の自室で

1/9の朝に亡くなってるのを

担当のヘルパーさんに発見された。

 

独居者の看取り医としては、

一般的に

たいていの在宅死は、

その原因が判明していて、

死が予期される場合には、

出向いて異状性がないことを確認し、

検案書ではなく

死亡診断書を発行することにしている。

 

そうしてあげないと、

警察を呼んで、

警察は数人で動いて、

第一発見者は小一時間事情聴取され、

私にも電話がかかり、

不可解な死である場合は、

解剖にまで回され、

時間と経費がかかることになる。

 

NYさんは2006年からの通院患者。

 

薬剤性精神障害(シャブ)

アルコール性精神障害

にて精神科病院に入退院を繰り返す

肝硬変、糖尿病の患者。

酒タバコも現役。

言っても改善するき気はない。

医療への甘えと過信。

調子悪くなると救急車を呼んで、

入退院を繰り返す。

 

以下、カルテ抜粋

2006年初診。   

青森生まれ。中卒で東京へ。ヤクザに拾われてシャブの売人。

逮捕歴はシャブで2回、道交法違反。浅草のコンビニ窃盗で横浜刑務所へ。

出所後、福祉を受ける生活。NPOが運営する寮を転々と。

飲酒のため退寮を繰り返す。

 

以後、17年。

内科的には糖尿病・肝硬変、 飲酒→下痢→低カリウム→脱力で入院。

入院しないまでも、

「ふらふらして力が入らない」と 救急車CALL.

救急隊員は脳外科や整形外科に搬送。

搬送先では

「アルコールだから来なくていい」

と返される。

この繰り返し。

精神科専門病院へは 数回入院。

 

一昨年65歳を迎え、

要介護者へ。

こうなると、ケアマネとヘルパーがつくので、

さらに他者への甘えと依存性が増える。

 

昨年 よっぱらって 転倒  肋骨骨折で救急車。

その半年後の12月、つまり、先日のこと。

ベッドから落ちて救急搬送。

搬送先で足の壊疽を発見されたが、そこには精神科が無かった。

「精神科のある病院へ入院、足の壊疽を治療するように」

といわれて、返された。

毎日 ヘルパーさんが様子みに訪問していたが、3日後の朝、自室で亡くなっていた。

 

報告を受けて、

「警察扱い」

を指示。

 

このような患者さんは

これまで20年間で20人目。

社会から放置された孤独死ではないが、

死因が明確な在宅看取り死でもない。

 

この人の生育歴をキチンと聞いたことはない。

聞いてもホントのことを話す人でもないかもしれない。

人生の起承転結の流れの中で、

青森から上野に出て来た中学生上がりが、直ぐに、ヤクザとシャブに染まった。

その分岐点が、思い返せばターニング・ポイントなのか?

それとも、少年の生まれながらの学習障害が、

学歴落ちこぼれの社会からはぶかれた原因で、

田舎に居場所ができなかったのか?

 

なんともいいようのない

気の毒な人生であることは

同年代うまれとして

感慨をおぼえる。

 

その後警察からはなんの連絡もないので、

解剖されて無いことを祈るばかり。

 

ご冥福を祈ります。