KE氏75歳 昨日日曜 午前7時 ご逝去

 

病名

直腸がん 肝転移・肺転移 2019/4 市民総合医療センターにてOPE

特発性肺線維症にて酸素吸入

虚血性心疾患(ステント歴)

 

にて市民総合医療センターから、

「この状態で直腸がんに対する治療のレジメンはなく、」

「がんの治療はむしろ有害となる」

と説明され、

 

意訳すると

「もうやることがないから、みとりの先生へ」

 

と理解して外来においでになったのが、

2023/6月のこと。

 

実はこの患者さんは以前からの知己で、ことぶき地区に精通してはいるが、ことぶきの住民ではない。

いわゆる“そとぶき”の人。でもことぶきの中にある簡易宿泊所ではないマンションに住んでおられる。

NPOを運営していた頃に財政支援をしていただいた恩義のある人でもある。

 

「ご恩返し」のつもりもあって、最期までの看取りを約束した。

 

「不治。打つ手無し」

強烈な宣告をされたにもかかわらず、冷静なたたずまいで、大物ぶりを感じさせる。

そのスジの道の人のトップならこんな感じだろうな・・

を感じさせるオーラが。

そのコワモテの反面、点滴が上手く入らないナースに茶々を入れるタイミングも態度もかわいらしく、

短い期間ではあったが、私は“とてもカッコイイ”この人を好きになった。

 

癌患者にとって、昔と違って、治療方針や説明声かけのチーム内の統一は必要不可欠であり、

告知はしたほうが良い。

私ら卒業の昭和55年頃は、癌の告知はセンセーショナルな話題であり、NHKが約2年間告知された患者の毎日をカメラとインタビュ-

で記録し続けることでドキュメンタリー作品ができあがった、それくらいの注目度であった。

告知をしないチームとひたすら癌を疑って生きる患者の間に信頼関係が生まれるわけも無く、やがて告知することが常道へと変わっていった。

 

告知はよい。

それは認める。

が、患者にとっては、「見捨てられた。もうおしまいだ」につながる医療は避けたい。

残された自分の貴重な時間を、誰と過ごし何をするか?

を決めるためのキッカケとなる告知でありたい。

のこされた人生の、居場所と生きがいとどう生きてどう死ぬか、を考えられるように支援してあげたい。

そういう意味で、

4月からはじめた高濃度ビタミンC療法は、この患者さんには全く効果がなかったが、精神的には救いとなった。

「ひょっとしたら、多分ダメだろうが、ひょっとしたら、副作用も無く、ご飯も食べられて、愛する人ともう少しの時間を持てるカモ知れない」

この、気持ちは死にゆく人に大切な感情だと思う。

 

高濃度75gのビタミンC点滴を、心不全があるので利尿剤を調整しながら、計12回行った。

腫瘍マーカーの改善も無く、状態は着々と悪化した。

食も減ったし、吸入酸素の量も上げる頻度が増えた。

 

そんな末期の状態でも、全くひとことも弱音を口にせず、まわりに優しい気遣いをすることができたのは、

もともとのこの人のキャラと、効果の無い高濃度ビタミンCの精神的効果だったような気がする。

 

(ちなみに、4月に開始してから高濃度Cが効いていると思われる患者さんは2人。おそらく今回はTOO LATE)

 

介護ベッドの導入もまだ不要な状況で、リビングに手足を拡げて文字どうり 

「大の字」

になって亡くなった。

実にカッコイイ死に方であった。

 

ご冥福を祈ります。