先週、51歳の男性が簡易宿泊所内で突然死した。

 

当院へ11年間通い続けてくれた患者Nさん。

初診時178kg(165cm)。

当院最重量の患者さん。

 

生活保護を受給して寿に在住。

家族のことや職歴学歴を聞いても快く答えてくれたことは一度も無かった。

「中学時代から100kg超えていた」

「高校は中退」

とだけ・・・・。

 

 

かといって、理解力に乏しいことは決して無くて、

減量も彼なりに勉強。

 

発芽玄米を中心にがんばっていた。

 

 

11年間で140kgまで減量できたのは、この努力の結果である。

 

オーバーウェイトのため、冠動脈微小循環障害性の狭心症、腰痛、変形性膝関節症があり、歩行がままならない。

 

減量はひたすら食事指導となる。

 

マジンドールという決しておすすめできないやせ薬を、あるいは、

防風通聖散という便量だけ増えて決して体重が減らない漢方薬を、

試みたこともある。

 

また、減量の為の 外科的治療(胃切除)を説明したこともある。

が、トコトン徹頭徹尾、入院を拒否していた。

 

精神的には専門医受診を拒否。

時々 幻覚や被害妄想的訴えをふと伝えて来たこともあった。

 

おそらくは、想像するに、

小学生時代から高度肥満にため学校生活になじめず、イジメの対象であり、

高校中退してからも、社会には居場所を見いだせなかったのでは無いだろうか?

 

ポーラのクリニックへはきちんと定期的に通院していた。

が、指導の厳しい院長(私)から逃れて、優しくて若いパートの先生の方に受診することも多かった。

 

「いつ、突然死してもおかしくはない」

患者さんに、たびたびそれを伝える必要があるのか?

難しい問題である。

 

伝えないと理解してくれない。

でもホントにその日が来るまでは、実感は無い。

その日がくる可能性は年々高くなる。

だから減量が必要。

でも、それを毎回伝えると、否定感ばかりの外来となる。

 

実際、30kgの減量が達成されているのだ。

決してなまけているわけではない。

しかも、高度の肥満はおそらく生まれながらの体質。

 

脅して、責めて、結果が出るものでもない。

 

年々、腰や膝への負担が増すばかり。

 

先週、自室内で転倒。

隣人が救急車を呼んだ。

 

救急隊は「搬送対象外」といい、

本人「入院したくない。乗っても帰されるだけ。」と。

 

かといって、放っておけず。

51歳という年齢は通常の介護対象年齢外。

役所のケースワーカーと相談。

「重症変形性膝関節症」

の特定疾病を使って、介護導入。

 

ケアマネさんが訪室。

気になったケアマネ、翌日再訪室。

「亡くなっています。」

 

救急車から警察扱いとなった。

 

部屋内独居の突然死。

これを、孤独死とは私は呼ばない。

なぜなら、社会とかかわった延長線上の死であるから。

 

こういった残念な経過での簡易宿泊所(いわゆるドヤ)内での独居突然死は、

16年間で当院外来通院中の66人にも及ぶ。

 

きちんと内服しなかったり、飲酒喫煙で通院がON-OFFだったり、

食道静脈瘤が破裂したり、心筋梗塞だろうと思われたり・・・

 

その、平均年齢は65歳と若い。

紹介先病院で亡くなったり、簡易宿泊所内で看取ったりの患者平均年齢78歳と比べて明らかに若い。

 

その理由は、

介護の介入ができない年齢

介護を拒否するような単身独居の患者キャラ

生活習慣や疾患予防を気にするような性格でもなく、

かつ、それを気にして長生きするような生きがい(仕事や趣味や友人や家族)がない。

 

などなど。

 

長い人生を歩いていると、

ふつう、

悪いことやいいことや、悲しいことや嬉しいことが往来する。

 

でも、希に。

ふつう

の人生を歩めない人もいる。

Nさんの生涯はそれにあたる(と私が勝手に値踏みしている。)

 

だから、

「いいね」

を押さないで、ただ、これをお読みいただき、

「そういう人生もあるんだね~」

と思ってください。

 

私が勝手に「幸せじゃなかったろうな」と判断した

Nさんから学ぶものが、ひとそれぞれに・・・。

みなさんへと伝わりますよう・・。

 

合掌