同社のMRの人がこの文書を持参された。

すでに、ネットでも新聞でも報道されていたので知ってはいたが、あらためてこの文書を見て、珍しく「んん!!!???」憤りを感じたのでここに書いておこうとおもった。

 

ディオバンは印象深い薬。

 

我々昭和50年代卒の循環器内科医にとって、ディオバンの前身である降圧剤ACE阻害剤は革命的スーパーDRUGの一つであった。 降圧剤なのに心不全の予防効果を併せ持つ。腎臓まで保護作用がある。そのうたい文句に当初まゆつば性を覚えた。しかし、確かにこれまで簡単に心不全を引きおこして入院せざるをえなかった患者さん達が、本当にACE阻害剤開始後入院しなくなった経験を多々感じたものである。

「ホントなんだ・・・」

空咳の副作用で中止を余儀なくされることが玉にキズであったが、臨床医として信頼性は年月と共にさらに高まり、多数のデータも論文化され、いわゆるEVIDENCE BASED MEDICINEとして老医も若医も処方。爆発的に売れた。この薬剤の恩恵を受けた人は多数~無数にいるはずだ。

 

ARBはこのACE阻害剤の副作用である咳問題を解決した薬剤であり、各社が競ってACE阻害薬の後継市場を狙ってに販売促進された薬剤である。

 

あまた発売されたARBの中で、ノバルティス社のディオバンのふれこみは群を抜いていた。

各種学会誌のコマーシャル部分や印刷物、新聞にいたるまで、ARB畑の差別化を謳い、他にないディオバンの優位性を誇示していた。

 

このKYOTO HEART STUDY結果は、そうしたARB競争に決定的に終止符をうつほどの強力な情報だった。

当時、私自身は病院の循環器医師から一般開業医になったので、心不全患者のマネージメントをする機会がめっきり減って、「これからはEVIDENCEを信じて処方を考えねば・・」、患者にとってこれだけの明らかなメリットがあるなら、このARBもディオバンに変更しないと患者にわるいな・・・」と、ARBならディオバンしかない方向にに洗脳されていった。

 

そして、報道されたように、「誇大」が暴露された。

製薬業界と大学病院教授病の病根の権化の様な事象であった。

当然 有罪判決が出るものと信じていた。

それが正反対。

私のように、広告や論文によってディオバンを処方させられた医師は全国にいっぱいいるはずだ。

判決内容に大いなる異論を感じる。

誰が証言台に立ったのだろうか??

 

不可思議な判決に何か見えない力が働いているのじゃないか??

とさえ、疑心が湧いてくる。

 

EBM上優位性を持つ薬剤を選択せずして、その患者が不利な結果に陥った場合、選択した臨床医は裁判において有責性を問われる厳しい時代である。

それほどに、医師は処方の責任性を感じながら日常の診察をしている。

にもかかわらず・・・

 

今回の判決はとうてい納得できない。